竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
驚くエリナが目を瞬くと、クーの手が淡い金の光を帯びる。
ぱあっと光があふれ、目を閉じて、また開いたときには光は収まっていて。
エリナが不思議に思って手元を見ると。シチューからはできたての時と同じような湯気が立っていた。
「あったかい……」
「炎の魔法を少し使いました。その、焦げたりはしていないはずです」
「あなた、魔法上手なのねえ……」
エリナはそう言って、もうひと匙を掬ってニンジンを口に放り込んだ。
うん、あたたかくておいしい。冷たくてもおいしいけれど、やはりあたたかいシチューにはかなわない。
感心するより先に、驚いてしまって平坦な感想になってしまった。
だって、竜種が番以外の人間種に魔法を見せることなんて――それも、こんな平凡な効果なのに扱いの難しそうな魔法を使うことなんて――珍しい、どころの騒ぎではない。
それを、出会ったばかりのエリナのために使ったことに、エリナは驚いていた。