竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

「あ……」
「…………、」

 クーの目から、ぽたぽたと涙がこぼれる。それが、貧しいスープを飲んだからではない、というのは、さすがにエリナにもわかった。
 クーの泣き顔は、それまでと同じで、けれど少しだけ違っていた。

「く、クー?」
「……同じ、味がする……」

 ほろほろとこぼれる涙があたたかい。クーは、シチューを飲んで、まるで懐かしく愛しいものを思いだしたかのように泣いていた。
 どうして、と思う。どうして、エリナのシチューなんかでいつも、クーはこんなに感情を揺らすのだろう。

 そんな特別なもの、なにも作っていないのに。
 ――ふいに、クーが口を開いた。
< 94 / 315 >

この作品をシェア

pagetop