竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

「あとは、明日やろう……」

 エリナはそう言って、まどろみのまま、ゆるやかに眠りに落ちていく。
 けれど、エリナは一つ、勘違いをしていた。
 恋を見つけた竜種の恐ろしいまでの手早さについて、知らなかったのだ。
 知っていれば、明日、なんてのんびりせずに、今日のうちにこの家を後にしていただろう。
 ここが一つのターニング・ポイントだった。

 ■■■

 まぶしい陽光がまぶたに降りかかる朝、エリナは日の光のまぶしさゆえではなく、窓の外から聞こえる騒音によって目を覚ました。
 ベッドの、もともと部屋に備え付けられていたマットレスがきい、と軋む。

 しかし、それとは違う、ざわめきのような音。
 エリナは半分だけ開いたままだったカーテンを開き、窓の外を見やり――言葉を失った。
 エリナの住む――いいや、住んでいたアパートの階段を降りた場所、そこに開けた玄関の前に、それは立派な馬車が止まっている。
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