青空くんと赤星くん
告白から始まる恋
1月9日は全国的に青空が広がり、日中は晴れ間が広がるでしょう、という天気予報は大当たり。
綺麗に広がる青い空を見ていると、短い冬休みが終わってしまい、さっき始業式を終えたばかりだというのに晴れ晴れした気分になる。
暖かい日だなぁ。
道行く人たちはみんな太陽にマフラーや手袋をとられてしまったみたい。
道端の溶けた雪だるまを横目に見ながら、私もコートを脱がされて駅に向かって歩いた。
電車に乗ろうとしたとき、ふらりとイケメンが近づいて、私の目の前で止まった。
「俺、青空優翔って言います」
一瞬、誰が誰に話しかけているのかわからなかった。
彼は「あ、同じ加茂高校の3年生です」と付け足して、長い指で真っ赤になっている耳をかいた。
「あの」
「はっ、はい?」
「くるみさんは、好きな人いますか?」
「はい?」
青空優翔は私を真っ直ぐに見ている。
初対面なのに、どうして私の名前を知ってるんだろう?
スタイルの良い体格だけで目立つが、その上に百合のように白くて美しい顔が咲いている。
その輝く姿に、余計に頭が真っ白になる。
ちょっと待ってよ。
こ、この人は、我が校の人気No.1イケメンとして有名な、
青空優翔(あおぞら ゆうと)……。
通称、青先輩だ……。
もちろん知っているけれど。
「その『はい』って、YESって意味ですか?」
「い、いいえ。えっと、好きな人はいません」
「それはよかった。……俺と付き合ってくれませんか?」
意味がわからないよ。
いまいま好きな人はいないって言ったのに。
「もしかして、もしかすると、からかってるんですか?」
「違います。本気で告ってます」
「そうでしたか……。その、ご、ごめんなさい……」
「俺のどこがいやですか?」
「あの、どこがいやとかじゃなくて……。単によく知らないからです」
「そうですよね。……そこに入りませんか?」
青空先輩はダッフルコートを脱ぎながら駅内にあるカフェの方へ歩いて行った。
ど、どうしよう。
どうやら告白を受け入れるまで帰さないつもりらしい。
でもだって、どうしてわたしなの?
女子高生に一目惚れするなら、他に美人のJKなんてたくさんいるのに。
その場でもたついていると、振り返った青空先輩が「話してみてから、ふるかどうか決めてほしい」と言った。
『それを言うなら、話してみてから、告白するのかどうか決めてほしい』と、思わず心の中でつっこんでしまう。
ついていくのをためらっていると、青空先輩は振り返って店先ののぼりを指さして、
「あれをおごります」と言った。
『期間限定!濃厚ショコラパフェ!』が手招きするように揺れている。
私は青空先輩よりも先に店内に入っていった。