青空くんと赤星くん
夕闇デート
4限目が終わったとき、青先輩からメールが入った。
『一緒に帰ろう?勉強会で俺も6限目まで残ってるから』
駅裏でYESと返事をした日、
電車がくる時間までの間に青先輩はこっそり私にこう教えてくれた。
『自分は推薦で受かってるからもう受験は終わってるけど、周りはこれからが本番だから、あんまり遊ばないようにしてるんだ』って。
そして、『友達の受験が終わるまでは、一緒に勉強してあげたい』と。
3年生は受験シーズンの最中だから、1月からは午前授業になるけど、図書室で親友と勉強するから、放課後まで残ってる日もある、とも言っていた。
勉強会というのはそれかな。
青先輩が人気者なのはルックスだけじゃなくて、こういった気遣いができるからなんだろうな。
私は二つ返事で『いいですよ』と返したけど、ちょっと考えて、
『学校の中じゃなくて学校の外で待ち合わせしませんか?』と続けてメールを送った。
学校のみんなに一緒に下校している姿を見られるのは恥ずかしい、と思った。
青先輩の100人中100人がきれいだと称賛するであろうその顔立ちは、とにかく女子生徒の目を引くのだ。
全校集会で体育館へ移動するときは、『青先輩に会える』と色めき立つ女子が多いし、体育祭では自分と同じ組じゃないのに応援されていた。
成績が学年一位の優等生や、強豪のサッカー部に入っているスポーツマンではないけど、イケメン部門ならぶっちぎりの一番、それが青空優翔だ。
そんな人と二人っきりで帰れば、大人しいお付き合いは不可能だろうな。
こういった不安をくみ取ってくれたのか、
青先輩の返事には『OK!』のスタンプが踊っていた。
帰りのSHRを終えて昇降口へ行くと、小走りする運動部の子たちで溢れていた。
後輩は先輩よりも先に運動場や体育館に着いて準備を始めていなければ怒られる、と聞いたことがある。
その点、私の入っている料理部は、先輩後輩の上下関係のキツさとは無縁の部だ。
部活は1週間に3日ほどしか活動がないゆるめの部で、調理室に集まってご飯やお菓子の献立を考えるのが1回目、調理する日が2回目、前回実食した料理の感想や反省をしてレシピをまとめるのが3回目。
今日はちょうどお休みの日でよかった。