青空くんと赤星くん
運命の赤い糸
翌朝、学校に行く前に、ラムボールをココアパウダーにもう一度つけた。
湿気のせいでふんわりさがなくなり、ゴツゴツした凹凸が気になったからだ。
小ぶりのラッピングペーパーに入れて、可愛い花柄のマスキングテープで封をすれば、仕上がりがより綺麗になった。
お昼休みになったら友達に渡そう、と思うとウキウキするし、今日はもう一つ、学校へ行くのが楽しみなことがある。
3限目と4限目にある芸術鑑賞会の授業だ。
1年生は落語、2,3年生は演劇、というのが加茂高校の総合学習のカリキュラムだ。
整列して体育館へ向かうとき、「5分前行動だよ~」という中野夫婦の掛け声に混じって、「青先輩に会える~!」「でも彼女できちゃったよね~」という女子生徒たちの嘆きが聞こえた。
2,3年生が徐々に体育館へ集まってきた。
3年3組がやって来たとき、館内がザワっとした。
たくさんの女子生徒たちの視線の先をたどっていくと、やっぱり青先輩がいた。
その容姿は群を抜いている。
顔が見えなくても、骨格だけで青先輩だとわかってしまう。
小顔で手足が長いから、身長は175cmくらいだけど、誰がどう見ても180cm以上に見えるだろう。
女子生徒が魅入るのも納得のイケメンだ。
付き合う前から青先輩のことは知っていたけれど、今は優しいオーラまで感じられる。
中身を知ったからかな。