青空くんと赤星くん





演目は『運命の赤い糸』。



天井の照明がおちて、ステージの幕が上がった。
布切れをまとった男がたたずんでいるそばに、灯籠のようなものがポッと灯っている。
肌をオレンジ色に照らされた男が囁く。



「また運命の人ではなかったか……」













肌をピンク色に染めた男が囁く。



「貴女様が、私の運命のお人だったのか……」







劇団ステラの皆さんの熱演に、盛大な拍手が送られた。
後ろを振り返った岩井さんが、「年の差婚だったね」と私に話しかけた。
昨日の席替えで近くの席にならなかったら、こんな会話はなかったはずだ。



「うん。どのくらいの差なんだろうね?
あ、これ見て」



私は隣の平山くんを見た。
手足を折り曲げて体操座りをしたまま、横にコロンと倒れている。



「えー、寝てるの?ありえん」
「屈葬みたいなポーズだね」
「ほんとほんと」



岩井さんは笑いながら、「平山くん起きなよ。もう終わったよ」と言った。



3年生の代表者がステージに上がって、大きな花束を渡し、更に大きな拍手が起こったとき、後ろからピューー!という口笛が響いて、平山くんが起きた。



「今の赤星くんが鳴らしたよね?」
「うん。あんなに大きな口笛すごいね」



確かに大きな音だったが、それよりも、赤星くんが口笛を鳴らして感謝を伝えるなんて意外だった。



体育館を出ると、なんだか映画館から出たときと同じで、夢から覚めたような気分だった。




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