青空くんと赤星くん
お待たせブラウニー!
私も6台あるうちの調理台のひとつに急いで向かった。
材料は、チョコレート、ナッツ、卵、バター、薄力粉、ココアパウダー、ベーキングパウダー、グラニュー糖。
下ごしらえに、アイスが薄力粉をふるってダマをなくし、餅ちゃんも型の大きさに合わせてシートを切ってくれている。
私はオーブンを170度に設定して、生地を直ぐに焼けるように……、ちがう、160度だ。
まずはナッツをから焼きするんだった。
ダイヤルを戻して調整し直す。
チョコレートとバターを私が溶かしている間に、二人が生地を混ぜていった。
お鍋やボールや泡だて器、ゴムベラなどの洗い物は、ブラウニーを焼いている間に洗う。
25分後。
オーブンから出てきた香ばしいブラウニーに、思わず抱き着きたくなった。
「竹串刺すよ」
アイスがプスっと竹串でブラウニーの中心に穴をあけて、焼き上がり具合を確かめた。
「おっ!なーんにもついてない」
竹串がきれいだということは、ちゃんと中まで焼けた証拠だ。
時計を見ると、しっかり冷ます時間はなかった。
やっぱりな。
最初の感染対策の話で失った時間が響いてしまっていた。
でも、しっかり冷ましてからサイドのシートをとらないと、形が崩れてしまう。
私は扇風機を弱で回した。
各斑のブラウニーの状態も確認すると、網の上にのせて冷ましている斑もいれば、まだ焼いている斑もいる。
もう網の上で粗熱が取れているブラウニーには軽くラップをかけて、風があたらないようにした。
これは、乾燥しすぎると、出来上がったブラウニーのシートを外したりフォークを刺したときに、側面がボロボロとこぼれたりするからだ。
とくに、5班のブラウニーは焼き過ぎて亀裂が入ってしまっている。
温度が高すぎたのなら、生焼けになってないか……大丈夫かな。
もしくは、オーブンから出すのが遅れて余熱で焼き過ぎたのかもしれないけど、それだと中がパサパサしているだろうから、乾燥はなお禁物だ。
特にこの冬の時期は気をつけなければいけない。
ブラウニーに限らず、お菓子作りは簡単にできるものが多いけど、完璧に作ることは難しい。
それが料理部に入ってよくわかった。
完璧に作りたいなら、レシピ通りの手順を守ることはもちろん、オーブンの温度から部屋と食材の温度にも気を付け、分量もしっかり計測しなければいけない。
目分量で時間や重さをはかったり、牛乳を豆乳にかえたり、バターをマーガリンにかえたりして、勝手に代用してもいけない。
そして、下準備やひと手間をサボると、味や見た目に如実に現れちゃうのだ。
私たち1斑のブラウニーには、そんな今までの失敗経験から学んだ成果が出たのか、目見麗しい、目見香ばしい状態で焼けている。
冷めたブラウニーに包丁を入れて切り分けたとき、ちょうどお腹がグ~となった。
学校の食器棚に置いてあるお皿は種類が少ないけれど、その中でも白色と水色のかわいい形をしたものを三皿選んだ。
トッピングやラッピングと同様に、お皿もなるべくこだわりたいのだ。
これは、画家や写真家が額縁にもこだわるのと同じかもしれない。
いよいよ、実食の時間がやってきた……!