青空くんと赤星くん
心配もそこそこにして、先に帰ることにした。
電車の時間まで16分もあったから、ゆっくり歩いていると、後ろから「逃げてー」と餅ちゃんが走ってきた。
振り返ると、餅ちゃんが大急ぎで走っていて、そのもっと後ろからさっきの二人組が追いかけている。
私もアイスもつられて走った。
三人の中で一番足の速い餅ちゃんが、「あそこっゲーセンっ」と息を切らして言った。
そこには学校帰りの若者たちがけっこういた。
あの中に紛れるということだ。
後ろから「コラまてぇ!」という怒鳴り声が聞こえてきた。
絶対に捕まりたくない!
走って走って、いつの間にか先頭を走っている餅ちゃんの後ろをついていった。
彼女はそのままプリ機コーナーまで走り抜け、辺りを見回してから一番奥のプリ機の中に入っていった。
私は後ろで疲れ切っているアイスの手を引っ張ってそのプリ機の撮影ルームの中に入っていくと、どん!と餅ちゃんにぶつかってしまった。
「いたっ!」
「あてっ!」
入り口で止まらないで奥に詰めてよ。
私もアイスも膝小僧に手をついて息を整えていると、餅ちゃんのほかにも脚が4本見えた。
……やっちゃったかもしれない。
誰か撮影中なのに飛び込んでしまった。
棒立ちのままの餅ちゃんの後ろから、私はそっと覗いた。
ピンク色のライトが光る中、椅子に腰かけた男女がピースしたポーズのまま、こちらを見て固まっている。
あ………………
うそ、でしょ………………
『次はハートの形を作ってね♪』
アニメ声の女性がプリ機からポーズの提案をした。
『はい、ポーズ♪3,2,1♪』
パシャッ
………息が整わないどころか、逆に息苦しくなってくる。
操作パネルの台に思わず手をついて、瞬きした。
目の前の男女一組。
女の子の方は、私たちを見て仰天しているように見える。
その隣の男の子は、私たちを見て……、いや、私を見て…………信じられない、という目を向けていた。
あの、まん丸の目で。
「青先輩…………」