青空くんと赤星くん
雪玉戦
3学期に入ってから初めてのLHRが始まった。
担任の浜崎先生はクラスメイトの「何するんですか?」の質問に、「席替えをします」とあっさり答えた。
「普通は2学期にしか行わない席替えですが、卒業まで残り3か月もないからこそ、みんなの仲が深まるようにしたいと思いました。あまり話してこなかった人とも話せる機会を設けてみましょう。とはいっても、席はくじ引きで決めますが」
突然の席替えに3組のみんなが騒ぎだした。
これは一大イベントだ!
友達が増えるかどうか、授業中にお菓子やスマホを取り出せるか、教室での居心地が決まると言っても過言じゃない。
そういえば、今年の運勢は大吉だったから大丈夫だよね。
浜崎先生が用意した箱を順繰りに回して、一人ずつ引いていった。
出た数字は5。
窓側の端から5番目……
やったあ!一番後ろだ!
座席を決めるとなれば、たいていオセロのように四隅をとりたがったり、最後列をとりたがったりするもんだけど、2つも叶うなんて、神様ありがとうございます!
「最前列の誰かー!私と席替わって?」
アイスが教室のみんなに大きな声できいた。
「小枝ってガリ勉タイプだったか?」
「いんや。視力が悪いの」
「スマホばっかいじってるからだろ」
「うっさいな。平山はあたしより後ろの席にいってよね。むだにひょろっとしてんだから黒板見えなくて迷惑」
「ひょろっとじゃねぇ。背が高いと言え!って言いたくないんだよな?だって」
「ちょっと!身長のことでディスったら、マジで怒るからな?」
もう怒っているように見えるし、平山も察してか黙った。
アイスは身長が150cmしかないことをコンプレックスに感じているから、平山も急カーブで避けた。
ギリギリアウトだった気もするけど。
一粒一粒がキャンディ包みされているちょこちょこタイムの出番だ。
一粒あげにアイスのところへ向かうも、
机の中身や鞄を取り出して一斉に移動している教室は、民族大移動のようで動きにくい。
なんとか浜崎先生にバレないようにそっと渡した。
「元気出して」
「ありがと!クルミどこの席?」
「へへん。後ろのすみっこ」
「当てたねぇ。あお、じゃない、甘党王子様に告られるわ、席替えは特等席だわ、
ラッキー続きじゃん」
「えへへ。そういえば、YESの返事したよ」
「おめでとう」
アイスがピースした。
「ありがとう」
私もピースした。
なんだか恥ずかしかったから、詳細をきかれる前に席へ戻った。
新しい自分の席に座ると、3組のみんながよく見える。
前の席は中野さんで、斜向かえは岩井さん。ふたりとも女の子だ。
右隣は、――――――――――――――