青空くんと赤星くん
金曜日の授業は全て終了した。
ということは、今週の授業も全て終了したということで宿題がたくさん出た。
バレンタインもあるし、溜息をつく暇もない週末になりそうだ。
「クルミー。今日は一緒に帰れなーい。帰宅部の彼氏にもチョコ渡さないといけなから」
「あのチョコ?」
「彼はウケるタイプー」
「楽しみだね!……ねぇねぇ、いったい何人に配るの?」
「う~ん。胸のサイズくらいかな~」
「え?……A、B、C、3人くらい?」
「え?もっとだよー。平均上くらい」
平均的な胸のサイズなら、たぶんB~Dのうちのどれかだけど、それより上ならD~Fのどれかかな。
指を折りながら、ABCDEFと数えた。
最高で6人くらいかな。
「そんなにいたらお小遣い足りなくならないの?」
「普段は奢ってもらってるからあんまりー。でも、バレンタインだけはお年玉から出したよー。愛はみんなにあげたいからね。じゃーねー」
推定4~6人の彼氏に愛を配りに行く餅ちゃん。
スキップする後ろ姿は誰よりもバレンタインを楽しんでいるように見えた。
アイスはアイスで平山くんに、「で、10個集まったの?」「靴箱の確認がまだだ!」「頑張るねぇ。入ってるにチョコ一個賭けてあげるよ」とからかって楽しんでいるようだ。
私も男子だったら、自分の靴箱にチョコが配送されているのかどうか楽しめるのにな。
階段の踊り場で立ち止まって、スマホで『胸のサイズ 平均』で検索すると、日本人のバストの平均は、Cカップとでてきた。
ついでに、海外にはZカップ以上の人までいるらしい。
自分のぺったんこな胸を見て、天を仰いだ。
ああ神よ、アンケート調査なんて自己申告制だもん、Cなんて偽りですよね?
「ちょっと来て」
Cカップが平均ということは、Aカップの私は胸の偏差値的には50以下……?
いやでも、世にはAAカップというのもあるらしい。
「ちょっと!」
平均や偏差値よりも、カップ別の構成比が知りたいな。
我がAカップ同士よっ!
「ちょっと!!」
急に肩を後ろへ引っ張られて、私はとっさに階段の手すりを掴んだ。
細い指が肩にめり込んで痛い。
振り返ると、目鼻立ちのくっきりとした美人が立っていた。
「ちょっと来てってば」
「は、はい……」