青空くんと赤星くん





「ただいま~」
「おかえり。じゃ~ん!」



お母さんの手には金色のリボンで結ばれた箱がのっていた。
見るからに高級そうな箱だ。



「これ何語?高級ブランドっぽいね」
「フランス語よ。読み方忘れちゃったけど。パリの老舗から取り寄せちゃった」
「やーん!まさかチョコ?」
「ノン。パリからはるばるうちへやってきたのよ。チョコじゃなくてショコラと呼んであげましょう」
「いらっしゃいませ、ショコラ様」



急いで手洗いうがいをして、リビングのガラステーブルの上で箱を開けた。
包み紙を取りさると、黒と白のショコラがピアノの鍵盤のように並んでいた。
ビターとミルクかな。
香りの立ちかたがすごくいい!



「食べてもいい?」
「ウイ」
「うい?」
「フランス語で『はい』って意味よ」
「ウイ。ショコラ様、いただきます!」





…………うふふっ……人生に勝った……





「極上~!」
「送料込みで10000円以上しちゃった。1粒700円くらいかしら」



この味をどう言い表せばいいのかな。
トレビアン?
日本語を失い、ついついフランス語になるような味というのがあるのか。
もうひとつ食べよう。



……うふふっ……



お母さんも無事に天国にいけたようで、両腕をダラーと垂らしてシャンデリアを見上げていた。
まさに至福のひとときを体感中だ。



箱の裏についている食品表示シールを見るとフランス語で書かれてあった。
誰のなんてお店なのかわからないけど、こんなに美味しいんだもん、熟練の職人が最高品質の素材を使っていることは確かだ。
鮮やかなオレンジ色の箱にまで職人のセンスが光っている。



「あら、お父さんの分を残すの忘れちゃったわ」



そんな罪悪感さえ一掃する後味の良さ。
誰が作ったのかわからないけど、とにかくメルシー!




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