青空くんと赤星くん
「二十歳の約束、守ってくれる?」
「え?」
部屋を出ながら青先輩が言った。
はたちのやくそく……?
約束、というワードに引っかかったのはホットラムチョコレートだ。
『へぇ。俺も大人になったら飲もう』
『私より一年早く飲めますね。いいな~』
『じゃあ、これはくるみちゃんと一緒に飲むまで待ってるよ』
『優しいですよね、本当に。そうしてもらっちゃおうかな』
『約束するよ』
「覚えててくれたんですね」
「くるみちゃんだってしょうがの話、覚えててくれたじゃん」
「甘いものの話は忘れません」
「くるみちゃんが二十歳の誕生日を迎えたら、俺からお誘いするよ」
遠くもなく、決して近くもなく、そんな小さい約束が守られるまでの距離が愛おしいね。
ホットラムチョコレートで繋がるのは、甘党の私たちっぽくていい感じ!
「そのとき、また口説くから」
「諦めてくださーい」
「それは俺の勝手でーす」
足の爪先をコンコンと玄関の床にぶつけて、かかとをブーツの中に入れた。
もう青空家に来ることはないだろうけど、それでいいと思える。
「お邪魔しました」
「……送らないよ。俺はこれから泣くからさ」
「その手にはのりません」
私たちはしっかりとお互いの目を見ながら手を振りあって別れた。
本心を伝えられたよ……!
エントランスの階段を数段とばしてジャンプした。
ブーツに羽が生えて、このままどこへでも跳んでいけそうだ。