まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
黒は、生徒の標的
火宮陽橘の招待状は、案外すぐに届いた。
翌日の夕食で、ちょうどその話題になり、家族全員に配られたのだ。
私の両親は、仕事を理由にお断りしていた。
なお、ヨモギ君により完治した先輩だったが、偽装のため包帯人間になっていた。
明らかに何かしらあった格好をしているのに、それに言及する者はいない。
可愛がられていない方は、こういう時便利だ。
いや、不便なのか。
不当に怪我させられても味方になってくれない部分は困るが、言い訳を考えなくてすむぶんは良い。
………わからなくなってきた。保留。
それからさらに一週間がたった今日。
火宮陽橘の通う学校の文化祭の日になった。
咲耶の通う学校の向かいにある、神道系中高一貫校がその会場だ。
余談だが、咲耶と火宮陽橘の出会いは、校門前でぶつかったことらしい。
運命を感じたらしいよ。
嘘っぽい。
校門入ってすぐ、受付をして、仮面を受け取った。
学校の敷地内では、仮面をつけるようにとのことだ。
主役は生徒なので、保護者や来賓に人集りができるのを防ぐためだという。
例えば、生徒達の中には、火宮陽橘のように家業を継ぐ事が決まっている者もあれば、これから就職活動という者もいる。
例えば、火宮の傘下に入りたくて、当主に声をかけたい者が、生徒、保護者、区別なくたくさんいる。
そんな時、仮面で顔を隠せば、媚を売る相手がわからなくなる。
そうなると、主役である生徒を見てもらえる。
「………というのが建前」
先輩は話を続ける。
「顔を見ていないので、無礼があっても知らなかったで済まされる。しかし、所作や纏う霊力によって、見る者が見ればわかる」
早速、火宮の当主と妻、咲耶に撒かれた私達は、ふたりでのんびり校舎までの道を散策していた。
「それでも、簡単に見分けがつくように配られたのが、この仮面だ。そして、この仮面には二種類ある」
「先輩のご両親と、咲耶に渡された白と、私と先輩のつけてる黒ですね」
周りを歩く人、ほとんどが白で、黒は避けるように歩かれる。
「生徒の家族や、傷つけてはいけない人には白。逆に、どうなっても構わない人には黒が渡される」
招待状を用意したのは弟君だ。
つまり、どちらを渡すかは、弟君に決定権があると見ていいだろう。
「私達、とことん嫌われてますねぇ」
「そしてここは、術師を育成する学校。そこらじゅうで、術が飛び交う」
水鉄砲が目の前を通り過ぎ、耳元で風が唸る。
「どうなっても構わないって事は、死んでもいいってことだ」
「わぁ、極端ー」
私達は、それらを華麗なステップで躱す。