まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
「黒は、生徒の標的。受付さえ済ませれば、部外者も入校可能なんだぜ」
「アピールの場が増えるので、むしろ歓迎って?」
「そのくせ生徒や白に傷つけられないってのが面倒だ」
「なにその理不尽。やられたらやり返したっていいじゃない」
「建前って言ったろ。うまく無力化しろ。全治何週間とか以ての外だからな」
紙吹雪が散った。
先輩のペンダントの刀が一瞬だけ姿を現し、飛んできたお札を細々に切り裂いたのを、目で追えた人は何人いただろうか。
「私と同じ一般の高校に通ってるくせに、先輩、やけに詳しいですね」
「陽橘の部屋にヨモギが諜報に行ったんだよ。パンフレットを手に入れた」
「ヨモギ君優秀」
「ははっ、今日のところは留守番だけどな」
飛びかかってきた蛇の首元を掴み、空高くぶん投げた。
「仕方ないですよ、危な過ぎますもん」
「式神の破壊は、一応許されてるんだが……」
「ヨモギ君は、死んじゃいますもんねぇ」
「だからお前も、今は見逃してやる」
「…………ん?」
飛んできた矢を受け止めた先輩の声は、淡々としていた。
「お前、違うだろ」
何を言ってるんだこの人。
私の冷静なところが訴えるが、口から出るのは別の言葉。
「…………気づいてたんだぁ」
頭で考えていることと、行動が一致しない。
海で、スサノオノミコトの力を使った時に似ている。
ちょっとだけ、気分が高揚した感じ。
「わかるさ。月海はあの程度の攻撃も回避できない」
先輩に断言され、悲しくなった。
先ほども、私の無意識でステップを踏んだのだし、私の無意識で蛇を掴んでぶん投げたのだ。
「うんうん。説明もなく痛めつけられ続けたせいで、回避よりまず受け身をとろうとしちゃうんだよね。肉を切らせても骨を断てない」
私の知らない、私がなかなか成長できない理由を、私の口が語る。
夢をみている気分でもある。
これはあれだ。
山で、ツクヨミノミコトと呼ばれた時の方が似ている。