まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
「…………」
苦い顔をする先輩。
こうしてツクヨミノミコトが出ている間にも、私の寿命は削られている。
「……………私は運がいい。先輩の教えは間違っていないよ」
「………それってどういう」
「つまらない話はここまでだ」
目の前には、黒仮面の剣士が数人。
私たちを囲むように展開し、刀を向けてくる。
「どこかのスカウトかな?」
手合わせを望み、黒をつける者もいるだろう。
「相当な手練とお見受けする」
先輩は刀を隙なく構えた。
私はペンダントの剣を顕現させる。
「私、剣は苦手なんだよねぇ」
「守ってやろうか?」
「いいや。適任に変わろう」
「適任……」
瞬きひとつで、ツクヨミノミコトからスサノオノミコトに切り替わる。
一瞬のことだった。
同時に跳躍する黒仮面の刀は折れ、意識を刈り取られる。
「……ほぉ、よく見切った」
私の最後の一閃は、一本の刀に止められていた。
「うっせ」
先輩は私の剣を弾いて、構えなおす。
「お前は敵か?」
「……………ただ、実力を知りたかった」
刀を向けられて動じないスサノオノミコトって、実は危険人物かも。
「………もうしない」
「それを信用しろと?」
「………」
スサノオノミコトが困っているのが分かる。
「先輩が、背中を預けるに足る人物か見極めようとしたのでは?」
口が、私の言いたいように動いた。
しかし、身体は剣を構えたまま動かない。
逃げたな。
「まず、お前が剣を下ろせ」
先輩の命令に従い、構えをとく。
それでも隙はない。
身体の操作権はスサノオノミコトにある。
先輩も同様に、刀を下ろした。
微妙な距離を空けて、先輩と見つめ合う。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「………んんっ」
先輩が頭を掻いて、右手を出してきた。
「お前はツクヨミノミコトより話ができそうだ。力だけ差し出して引っ込んでくれるか」
「……有事の際には、吾が剣を振るおう」
私は剣をペンダントに戻し、先輩の握手に応えた。
身体の感覚が戻ってくる。
「先輩……」
「………んじゃ、ま、行くか」
握手の手を繋ぎに変えて。
襲撃者が途絶えたところで、私達は校舎へ入った。