まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
3 私の通う学校は。
少ない可能性を手繰り寄せるのが
九月も半分を過ぎた。
火宮の術師に焦がされた我が家の修復には、まだ時間がかかるらしい。
なので今日も私は、火宮先輩の屋敷に家族共々居候している。
もちろん、学校へ行くのも先輩の家から。
私はどこにいても爪弾き者。
肩身が狭いのは、どこにいても変わらない。
現に、放課後の今、私は見知らぬ女子生徒に連行されていた。
ホームルーム終わりに、わざわざ教室までお迎えに来てくださったのだ。
私のようなボッチが呼び出されるなんて、理由はひとつしかないでしょう。
人気のない校舎裏で、彼女は足を止めた。
真っ直ぐ私を指さして、睨みつけてくる。
「あんたでしょ、火宮君に迫った身の程知らずってのは」
やっぱり、火宮桜陰先輩だった。
隠しているつもりでも、見ている人は見ているんだよなぁ。
先輩は学校では人気者。
家ではあんなに嫌われているのにね。
……本人に言ったらしばかれるやつだ。
いや、絶対零度な視線を頂戴するだけかな。
想像して、苦笑した。
見咎められまいと前髪を下ろしたが、間に合っただろうか。
余計な難癖をつけられても困る。
一般人相手に霊力で脅す真似はしない。
それをしてしまうと、火宮先輩を裏切る気がするから。
イカネさんのために鍛えた力を自分のために使うなんて、私のささやかなプライドが許さないのだ。
だから、ツクヨミさんも、スサノオさんも、出てこないでくださいね。
ざわめく内側に釘を刺しておく。
「あんたみたいなブス、火宮君が相手にするはずないでしょ。勘違いしてんじゃないわよ! 付き纏ってて恥ずかしくないの!? このストーカー!」
テンプレ通りの言い分に、私ははいはいと俯きがちに聞き流していた。
耐えていれば、いずれは終わる。
「第一、火宮君には、あたしみたいな美女がお似合いでしょう。そう思うわよね!」
華やかな巻き毛を振り回す自称美女。
咲耶を見た後だと、どんな美女も霞む。
「火宮君に釣り合うために、美容も欠かしていませんのよ。この美ボディを保つためのジム通い、エステに高級パック、頭の先から足の先まで隙はありませんわ!」
話が長い。
このままでは訓練に遅刻してしまう。
そして理不尽な暴力に耐えるのだ。
………やっぱり、これは先輩のせいだし、先輩なら裏切ってもいい気がしてきた。
『イカネさん、ツクヨミさん、スサノオさん。どうやったら無難に逃げ切れると思いますか?』
心の中で呼び掛けると、返事はすぐにあった。