まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
『殺そう。隠蔽は任せて』
『却下』
ツクヨミノミコトは発想が物騒だ。
もちろん私がそんな提案受け入れる気がないとわかっているでしょうに。
………わかっていますよね?
『アマテラス様に報告いたします』
『冗談だよぉ。だからオモイカネ、お姉様に報告は勘弁』
イカネさんいいぞもっとやれ。
『………意識を刈り取ればいい』
スサノオノミコトも似たような発想だった。
『ごめんなさい。もっと平和的解決法はないですか?』
『向こうが望んでいないのだから、無理だろう』
『スサノオの言う通りさ。あちらさんの望んでいないことを無理に進めようとして、成功するはずがないだろう?』
『月海さんは、そこをなんとかしたいと言っているのですよ』
ツクヨミさんとスサノオさんに聞いたのが間違いだった。
きっと彼らは弱肉強食の世界で、やらなきゃやられる世界で生きてきたのだ。
私と近しい感覚を持つのはイカネさんだけだったよ。
『月海、きみも今の状況を面倒だと思っているだろう? 彼女がいなければいい、煩わしいもの全て消えたらいいと思わないかい?』
『ツクヨミノミコト、月海さんを唆すのはおやめなさい』
『私はただ、話をしているだけだよ。決めるのは月海さ』
『屁理屈ですね。アマテラス様に報告いたします』
『なんでもかんでもお姉様の名前をだして脅さないでくれるかな』
イカネさんとツクヨミさんって、仲良いのかな。
『………死んだふり』
『スサノオさん、今何て?』
イカネさんとツクヨミさんも言い合いをやめ、スサノオさんの話を待つ。
『死んだふりをしたらいい。肉体を水蒸気ほどに細かくして、離れたところで再構成する』
咲耶と初めて戦った時に使った術ですね。
肉体があるからダメージが生じることを証明した、最高峰の防御術式。
腹を貫かれた大怪我も一瞬で治る優れもの。
『あははっ。目の前にいた人が、霧のようにいなくなる。なるほど、これは平和的解決だね。スサノオ天才!』
大きくうなづくツクヨミさんに、私とイカネさんは待ったをかける。
『どこが平和的解決ですか。問題しかないですよ』
『普通の人間は霧散しません』
却下されたスサノオさんはしょんぼりしていた。
本気で採用間違いなしだと思っていたらしい。
『オモイカネは私たちの案に異を唱えてばかりだねぇ。さぞ完璧な案をお持ちと見える。……聞かせてもらおうか。お姉様の側近よ』
私も期待の眼差しでイカネさんの提案を待った。
『それは……』