まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
全ての不幸は私のせいだ
学校行事というものは、楽しいものもあれば、いらないと思うものもある。
いらない中にも、ほんとにいらないものと、まだましと思えるものがある。
さて、当たり前なことを再認識したところで。
「ほんっといらないよねー」
「そーそ。先生なに考えてんだろ」
現在進行形で進んでいるこの生徒に不評な行事を、私はまだましに分類していた。
「暑いのに山登りとか、バカじゃないの?」
「ふざけた伝統とか変えちまえよ」
「うちも他の学校みたいな文化祭したかったー」
「帰りてえ」
「どうせなら休校にしちゃえばいいのに」
私の通う学校には、弟君の学校のようなキラキラな文化祭はない。
いや、弟君の学校は、かなり特殊だったね。
出店やお化け屋敷、ステージで歌って踊ったり、喫茶店があったりしない、ということが言いたかった。
華やかな文化祭は楽しそうで憧れもあるが、私のようなボッチには地獄の時間確定なので、無しでありがたく思っている。
しかし、登山が好きというわけでもないので、まだましと思いながら、無言で山道を登るのだ。
山道といっても、人の手が入った登山道。
危険なことなど、普通に通るぶんにはない。
前方のやけに騒がしいグループが、後ろ歩きしたり、背中を押したりしてふざけている。
あーあ。
この後絶対なにかやらかすな。
という予感通り、ひとりが転び、転んだ人に躓いて転びと転びが連鎖する。
「痛ってえな!」
「何やってんだよ!」
元気のありあまる彼らは起き上がっても笑っていた。
「俺じゃねえし。これのせいだろ!」
そのうちのひとりが、躓く原因になった地蔵を蹴飛ばした。
「あ………」
信じられないものを見て、思わず声が出た。
「ったく、前見て歩け」
「誰のせいだよ」
けらけら笑って先へ進む彼ら。
最後尾を歩いていた私は、地蔵の前にしゃがんで手を合わせた。
バカな奴らがすみません。
後で言って聞かせるような度胸、私にはありませんが、代わりに謝ります。
「お詫びにマシュマロいりますか?」
美味しいですよ。
「…………」
返事はない。
私は立ち上がり、登山の続きをする。
マシュマロのお供えは、環境破壊に繋がりそうなのでやめた。