まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
私の出番というわけだね
ヨモギ君の鼻を頼りに辿り着いたのは、以前見た物と同じ門構えの屋敷。
神水流家。
「マシロの奪還を第一に、犬神の件も探る」
「あと、ヨモギ君似の美女もね」
「ああ」
私と先輩は、黒のスーツと黒の仮面を身につけ、屋根から堂々とお邪魔した。
先輩に背負われているヨモギ君は、白銀を隠す黒の大きめパーカーを着ていた。
庭に飛び降りると、すぐ植木に身を隠し、周囲を窺う。
ふふっ、スパイっぽくて楽しいかも。
こんな状況でなければ、楽しんでいたところだ。
人影がいくつか、庭を警戒している。
ヨモギ君が鼻をひくつかせる。
「………あっち」
ヨモギ君の指差す方。
明かりが灯り、人の多い場所だ。
「多少のことなら、私が誤魔化すよ」
ウインクつきで言うツクヨミさんは、純粋に楽しんでいる。
ツキの神が味方だと、こうも心強い。
「警備のふりをして紛れることもできるかもしれないが、完全じゃないな……」
弟君の執事喫茶を思い出す。
巻き込まれてからはすぐだった。
「あれは本気じゃなかったもん」
「今はまだ、賭ける時じゃない」
「………そうだねぇ。切り札は最後まで取っておかなきゃ」
「では、侵入経路は……」
先輩は、無言でそこを指差す。
私達は床下を移動することになるらしい。
「王道すぎて、逆に警戒されてそうですが」
「そこで、ツクヨミの出番だ」
切り札はどうしたよ。
「あれ? 実は先輩も楽しんでますぅ?」
先輩はニィッと白い歯を見せた。
無言の肯定。
ツクヨミさんと先輩がいれば、なんとかなる気がした。
最高の仲間がいて、不可能なんてあり得ない。
慢心はいけないが、少なくとも、それくらいの気持ちで挑まねば。
必要以上の緊張は、失敗を誘発する。
ペンダントを握り、深呼吸。
「作戦開始だ」
先輩の号令で、私達は動きだす。