まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー


「この池自体が魔法陣になっています」



「イカネさん! タケミカヅチは!?」



「凍らせてきました。しばらくは動けないでしょう」



イカネさん、すごい、強い……。


キラキラした目を向けると、彼女は池に手を差し込む。



「この池に映る月、不自然でしょう?」



池に波紋が広がっても、月は揺れない。



「月の神なら当然、気づいていたでしょうけど」



勝ち誇ったような、馬鹿にしたような顔を向けられる。

そんな顔もお美しい。

ご褒美有り難う御座いますと歓喜する私。

スサノオノミコトは反応を示さず。

ツクヨミノミコトは舌打ちした。



「こちらの結界を張った方は、幻術がお得意のようです。視覚に惑わされないで、霊力の流れを視れば、開錠はおのずとできるはずですわ」



イカネさんは手に残る水滴を払う。

池に落ちたそれが波紋を広げ、重ねた。



「霊力の流れ………」



少年は静かに目を閉じて、ヘッドホンを装着。

すると少年からすさまじい量の霊力が噴き出した。

引きこもりのような外見をしている小柄な少年だが、この人も名家のご子息なんだな。



「……………みつけた」



少年の霊力が池を駆け巡り、ひとつの魔法陣を浮かび上がらせる。

偽物の月が地下へ続く扉に変わる。

ヨモギ君が鼻をひくつかせた。



「……このさきから、マシロのにおいがする」



「行きましょう」



「待って!」



扉を潜ろうとした私達を呼び止める少年。



「僕も行きます。一緒に行かせてください!」



必死に訴える少年を置いて、イカネさんは扉に手をかける。



「許可なんて必要ないでしょう。ここは貴方の家、我々は侵入者」



「それって………」



「好きにしろってことだよねぇ。ま、変なことしたら容赦なく潰すけど」



「…………はい」



「行こうか、少年」



「ツクヨミノミコトさん。僕は、神水流響(かみずるひびく)っていいます」



「……行こうか、響少年」



「はいっ」



ツクヨミノミコトと響が親睦を深めるのを、イカネさんが見咎める。



「ツクヨミノミコト、余計なことはなさいませんよう」



「もちろん。この人に不利になることはしないさ」



ツクヨミノミコトは私の胸に手を当て微笑む。


索敵係のヨモギ君を先頭に、イカネさん、
私、響と続き、地下へ続く階段を降りた。

私の火の術で足元を照らす。

結構な段数降りなければならなそうだ。


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