まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
でも。
『月海、君にだけは私の味方であってほしいのだけど』
『ごめんなさい、それでも私の一番はイカネさんです』
失礼な考えを察したツクヨミノミコトからの苦情は一蹴する。
『一心同体な私たちの絆はその程度だったの?』
『ごめんなさい、それでも私の一番はイカネさんです』
『私の話を聞いてくれる?』
『もちろん。それでも私の一番はイカネさんですが』
『うわああぁぁぁん! オモイカネのどこがいいってゆーんだ!』
『イカネさんは、私の初めてのお友達なので……』
『出会った順番のせい? 私が先に話すことができていれば、私が月海の一番になれてた?』
『それは………』
先に出会った人を優先するのが正解なのか。
そんなことはない。
後から出会う人の方が気が合うことだってあるだろう。
友人は、皆平等に扱いたい。
理想はそうでも、現実はうっかりイカネさんを一番に考えがちだ。
反省はしていない。
想いの重さなんて、人それぞれじゃないか。
同じだけの想いを返せるなんて、保証はできない。
返してもらえなくても、その人に八つ当たりすべきではないはずだ。
なんて、保身じみた事を考えてしまう、悪い私。
どうしても初めてのお友達にかける想いが大きすぎて、二番目以降が軽くなりがちになるのには反省。
交際の申し込みじゃないのだ。
わざわざ一番じゃないと切り捨てることもなかった。
言うべき事ではなかった。
ここは私の落ち度だ。
私なんかと親しくしてくれる皆様に感謝を込めて、平等に接していかなければ不満が出る。
平等に接しているつもりでも、相手が望んでいる対応でなければ不満が出る。
不満は争いの種になり、芽吹き、爆発すれば刺されるかも。
いやはやなんと難しい。
『いいもん。長期戦は覚悟の上だもん。いつか私が月海の一番になるから! オモイカネから親友の座を勝ち取ってやる!』
拗ねてしまわれたようだ。
ただ言ってることが、恋人持ちの相手を狙う当て馬なんだよなぁ……。
ツクヨミノミコトの愛を一身に受けて、流されそうになるが、それは少々危険な誘いのような気がして。
ツクヨミさんに毒されて、道を踏み外したらどうしよう、なんて思っちまうんですよ。
誠実な人より、危険な人に惹かれるアレかな。
もしかして将来私は、イカネさんに別れを告げてツクヨミさんとくっつく系……?
スサノオノミコトがやれやれと息をつく。
「ご主人様、ツクヨミノミコトに何か言われましたか?」
しばらく無言でいた私を心配してくれたのだろう。
心配そうなイカネさんに微笑んだ。
「友達って、なんだろうと思っただけだよ」
あらぬ方向に迷走しかけたことは黙っておく。
イカネさんは目を見開き、よくわからないというように首を傾げた。