まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
「何を今更。あなた様がわたしくしに求めた役割ではありませんか」
「役割……?」
「学校帰りにファミレスで、一緒にパフェを食べましたね」
それは、私が初めてイカネさんを召喚した日のこと。
放課後に特盛パフェをふたりで平らげた。
「友達は並び立つものだ、困った時には助けるものだと、わたくしの力になってくださいました」
結局、私が先輩にボコボコにされて今に至ったわけであるが。
「役割…………役割か。イカネさんはやっぱりクールだね」
「俯瞰的にものを見なければ、アマテラス様の副官にはなれませんわ」
アマテラス様。
ツクヨミさんとスサノオさんのお姉様。
お姉様の副官だから、ふたりはイカネさんが苦手なのかな。
イカネさんは理論的に行動する。
池の結界も、一目見ただけで見抜く知識。
感情で動いているツクヨミさんとは、もとより相性が悪そうだわ。
「イカネさんはやっぱりすごいひとですね」
「うふふ、それほどでもあるんですよ」
私にはもったいないひとが、友達になってくれている。
釣り合うようになりたくて、鍛えている。
新しく友達希望のツクヨミさんが現れて、私に力を貸してくれる。
私はツクヨミさんに何もしていないから、搾取するだけで。
私、すごく悪いやつじゃん。
『二度もフラないでよ? 私がやりたくてやってるんだから』
『………絆されるのを待ってる?』
『あははははっ』
本人がいいと言うなら、私から言うことはない。
こういう友情の形もあるのだと、諦めよう。
仲良くなりたくて付きまとう、大いに結構。
考えることはやめた。
今はここを無事脱出することをを一番に考えなければ。
疾走する獣、鳥や虫の羽撃き、多くの音が近づいてくる。
警告音だけで終わるはずがない。
ここに来るまでに居た、実験動物たちの檻が開かれたのだ。
真っ直ぐこちらに向かってくるあたり、出入り口は封鎖されているとみていいだろう。
「あの動物たちは売り物なんでしょう? 制御装置がついていますよね」
イカネさんが迎撃姿勢をとりながら訊く。
学校で戦った犬神は、首輪が壊れて暴走したのだ。
逆に、首輪がついているなら従えることができるはず。
「無理。引き渡しの時につけるから、あれらには付いてない……」
響の回答は、期待したものではなかった。
「……仕方ありません。殲滅します」
「だめだよ!」
雷を指先に集めるイカネさんを止めたのは、ヨモギ君だ。
「はなせばわかるよ」
「ボクたちてきじゃないもん」
「あいつら、たすけてっていってるの、わかるもん」
「ねー」
ヨモギ君とマシロ君が頷きあう。
獰猛に襲いにきているようにしか見えないんだが。
子どもの感受性というものは恐ろしい。
それとも、あやかし同士で通じるものでもあるのかしら。
「で? どうやって話すというのです」
イカネさんの厳しい追及に、ふたりは手を繋いで立ち向かう。