まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
神水流当主の体が膨張するように膨れ上がり、空の小瓶が手の中で割れる。
みるみるうちに、十階建てのビル相当にまで巨大化した。
「なんとっ!」
「見苦しいぞ、神水流よ!」
「我々を殺して口封じするつもりか、愚かな」
「貴様にやられるほど弱くはない」
剣が、蔦が、岩が、炎が、巨人となった神水流当主の顔面を襲う。
ヒュッ。
という間の抜けた音を立てて、それらは消えた。
「なにっ!?」
「無傷だと!?」
「遠いから、威力が落ちたのか……」
「クソッ………。そこの仮面の者! あれを退治せよ!」
火宮当主が、先輩に命令する。
「は………あぁん?」
反射的に頷きかけた先輩だったが、切り替えてメンチ切る。
長年に渡り刷り込まれた関係は、そう簡単に抜け出せない。
「なんだその態度! 火宮家に入れてやらんぞ!」
「いらねぇよクソ親父!」
「クソ親父だと……っ! 我が誰かわかって言っておるのか……!」
「テメェこそ誰に口きいてやがると思ってんだ!」
顔を突き合わせ、至近距離での親子喧嘩。
「我は貴様の父親ではない!」
「…………そうだろうよ、すっとこどっこい!」
売り言葉に買い言葉。
そんな彼らの頭上に、巨人の足が迫る。
「交渉決裂だ! 無能な息子がいなくなったところに、貴様を迎えてやろうと思ったが、残念だったな!」
「望むところだ!」
二人が逆方向に飛び退き回避。
先程まで彼らがいたところを巨人が踏みつけた。
巨人が動き出したところで、ほとんどの者が逃走を図るが、そう都合良くはいかない。
「なんだ、見えない壁が!」
「空もダメだ!」
塀を越えようとしても、見えない何かに邪魔されて出られないでいた。
それは、神水流家の部下も同じ。
「ここは神水流の屋敷。これくらいの仕込みはあって当然か……」
「生きて帰す気はないらしい」
「あれを倒さないとならないようだ」
「まったく、手間のかかる……」
当主達は顔を引き攣らせながら、それを見上げ。
部下や鬼は、巨大なそれを絶望の眼差しで見上げる。
「もう嫌だ!」
「来るんじゃなかった!」
「お前らのせいだ!」
当主達の攻撃が一切効かなかった、という事実のせいで、力のないものは恐慌状態に陥る。
門の周囲に固まる彼らを、巨人による蹴りが襲う。
砂利のように吹っ飛ばされた彼らは、蹴られた先に叩きつけられた。
ただ、大きいというだけで圧倒的。
ただの踏み潰しや蹴りが必殺の攻撃だ。