まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
忠告してあげる僕って優しい
ふたりの妖力が漏れないよう、イカネさんが隠蔽の結界を張りながら火宮家を歩き、私の部屋に着いた途端、解除した。
自身の分のみならず他者までもを隠すには、結構気を使うらしい。
「お疲れ様でした」
「ふふっ、ありがとう」
小型冷蔵庫から冷たいお茶を注いで渡した。
イカネさんには、まだまだやってもらいたいことがある。
この、暑い部屋を冷やしてもらうのだ。
こう考えると、彼女に頼りきりだなぁ。
コンセントはあるのに、エアコンもつけてくれたっていいじゃないか。
なお、小型冷蔵庫は私が持ち込みました。
両親と妹は、冷暖房完備で家具備え付けの、広々快適生活らしい。
これが、可愛がられている人と可愛がられていない人の差です。
部屋を与えられているだけ感謝しろですって。
今日の任務の報酬も、手取り少ないんだろうなぁ。
食、住の提供はあるので、日々の暮らしには困らないが、危険度に見合っていないと思うのです。
文句を言ったら一銭も貰えなくなりそうなので大きな声では言いません。
特に今は、私は非公式で任務に参加しているわけで。
ひとり分の報酬をふたりで分けていることになる。
報酬は任務につき決まっていて、参加人数による山分けが原則だとしてもだ。
先輩に回ってくるものは、業界が選別しきった後の誰もやりたがらないものばかり。
しかも、手数料たんまりしょっぴかれて、最低賃金なんだよなぁ。
「…………なんだその目は」
「先輩も大変ですねぇ」
スパーンと頭をはたかれた。
「いったい! なにすんですか!?」
「うるせぇ。なんかむかついただけだ」
「理不尽だ!」
「いいから早く、マシュマロ焼け。子どもたちがお待ちかねだ」
見れば、マシュマロを串にさしてキラキラした目を向けてくる美少年がふたり。
「ふっ………」
ここは先輩の理不尽には目を瞑り、黙って火を出すのが大人の対応というものよ。
私の焼きマシュマロ専用と化した火炎の術を披露する。
「わぁっ!」
「これにこうして、まわしながらやくんだ」
「こう?」
美少年ふたりが仲良くマシュマロを焼く姿は微笑ましい。
「んで、どーするよ」
「どーするって?」
質問に質問で返したら、先輩に睨まれた。
「わかってますよ、鬼の子の事でしょう?」
「お前が連れてきたんだから、お前が面倒見ろよ」
「どっちかっていうと、連れてきたのはヨモギ君では?」
「あぁん?」
「ナンデモナイデース」
「まぁ、ヨモギも、同年代の友達ができて嬉しそうだからな。俺も力になってやりたいと思うよ」
「さすが、ヨモギ君拾った飼い主」
「なんか言ったか?」
「ナンデモナイデース」