まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー


死んだはずのひとが生き返るなんて、普通に考えたらおおごとだけど、いいことだと思うから、見逃す。

なにより、イカネさんも加担しているのだ。
悪いことのはずがないわ。



『君のその、オモイカネ至上主義、気に入らないなぁ』



『ツクヨミさんは大事故が多いんですよ。もっとイカネさんを見習ってください』



憎まれ口をたたくが、喜ぶ皆を見ていると、こっちまで嬉しくなる。



『生きてて良かった………。というか、こんな簡単に生き返らせられるんだ……』



『今回は特別さ』



『先輩の為に、ですね』



ツクヨミノミコトは火宮桜陰をいたく気に入っている。

今も、上機嫌に鼻歌を歌っていた。



「ご主人様、人的被害は無くなりました。次は……」



イカネさんが次のお札を渡してくれる。



「急急如律令」



次、呼ぶ神様の想像はついている。



「またお前さんか」



オオクニヌシ。

学校を破壊した時、お世話になった神様だ。



「すみません。うちのふたりが、またやらかしました」



「お前さんも大変じゃのう」



それ、と打ち出の小槌を振れば、大穴の空いた地面も、大破した屋敷も元通り。

一仕事終えたオオクニヌシは、自身の肩に羽休めに来たスクナヒコナを撫でる。



「以前持たされたお礼、美味かったぞ」



「今は手持ちがなくて、近いうちにお贈りします」



「ほっほっ、楽しみにしておるぞ」



言って、オオクニヌシとスクナヒコナは消えた。

神界に帰ったのだ。


そして、スクナヒコナ、ツクヨミノミコト、オオクニヌシの活躍により、死傷者ゼロ、建物被害はゼロとなる。

つまり先輩の目論見通り、被害者がいなくなったのだ。

こちらが責められる理由は無くなった。

術師と鬼の争い。

巨人と化した神水流当主による犠牲。

とどめには狼による吹雪。

全て無かったことにした。



「おいおいおいおい! 生き返ったからって、無かったことにはならないぞ!」



「そうだそうだ!」



火宮当主の後、他当主の大合唱。


こいつら、何言ってもケチつけてくるなぁ。

何かひとこと言ってやろうと足を出す前に、先輩がからっと言った。



「じゃあ、もう一度殺そう」



爽やかな笑顔で、血も涙もない……。

それが脅しでもなんでもなく、当たり前のことのように口に出している。



「……っ、今回だけ、見逃してやるっ!」



さすがにビビったらしい当主達は引き下がった。



「ご理解いただけたようで、感謝します」



見逃してあげてるのはこっちの方だ。

先輩はよく我慢している。

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