まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
「勝手な事言うなよ! 僕が火宮家次期当主だ!」
異を唱えるのはもちろん陽橘。
それに雷地がため息をつきながらも反論する。
「でもお前、弱いじゃん。その女と付き合ってから、途端に弱くなった」
「手加減してやってるのがわからないかな?」
「強がるなよ。手加減してないくせに。俺達は常に命の取り合いしてんだ。たとえそうだったとしても、そんな言い訳が通用するわけないよねぇ」
「……咲耶は悪くない」
「当たり前。悪いのは陽橘、お前だけ。日々の鍛錬を怠っているの、わからないとでも思った?」
ヘラヘラしながら隙のない雷地に勝てないと判断した陽橘は、標的を先輩に変えた。
「父さんにスカウトされたからって、いい気になるなよ。兄さんにだって負けた事ないんだ。同じように剣ばっかで術も使えないお前に、僕が負けるはずないだろ!」
不意打ちのつもりだったのかもしれない。
しかし、予備動作でバレバレだ。
そして今の先輩には、わざと負けてやる理由もない。
炎の術が発動する前に一瞬で距離を詰めた先輩が、陽橘の鳩尾に拳をめり込ませる。
「………!」
陽橘は声もあげず気絶した。
鮮やかな手つきだった。
咲耶は陽橘に声をかけているが、反応はない。
先輩はそれを無感情に見下ろして、反撃がないとわかれば興味をなくしたように戻ってきた。
「お前たちは、なぜ俺に味方する? 火宮が落ちぶれた方が、お前らの有利になるんじゃないのか?」
尋ねると、あっけらかんとして返る。
「有利? とんでもない。面倒事は分担したいよねー。今の陽橘だと尻拭いに奔走させられそう」
「ほんとそれ。五家は協力しなきゃね」
「力関係に興味などない」
「………あの人の子どもの主人だから。理由としては十分……」
「私は先輩が好きだから、先輩を助けるよぉ」
彼らに競うように、ツクヨミノミコトが先輩の右腕を抱える。
例によって、ぺたんこな胸を押し付けるのだ。
人の身体で……。
『私の力で、将来グラマラスな肉体に変えてあげよう』
『いりません』
巨乳ならくっつけてもいいなんてなりませんから。
でも、先輩を手伝う事について異論はない。
「たとえばそうだねぇ………。そこの老害をぶっ飛ばす、とか」
先輩の評価が上がるのが面白くないのが今の当主達で。
ツクヨミノミコトの流し目の先、怒りに顔を染める当主達があった。