まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
言葉に詰まる私達をおいて、イカネさんが前に出た。
「かの術師は、昇進の為、手柄を欲していました。そんな時、村人から子供を攫った鬼の話を聞き、これを利用したのでしょう。大義名分を得た術師は、討伐に繰り出し、成功した。この術師が、のちの初代火宮当主となります。……あなたがたは嵌められたのですよ」
「そんな………」
鬼と先輩の呟きが重なった。
「当時は、人間の世界とあやかしの世界が分たれていませんでした。事態を重く見た当時の術師の頂点が、アマテラス様に請い、今のように住処を分けたのです」
イカネさんは続ける。
しかし、完全に分けるのはアマテラス様をもってしても困難でした。
希望するあやかしをあちら側に連れていくことしかできず、一部のものは我々に従わずこちらに残り、人を襲うものは術師に退治されています。
あちらとこちらを繋ぐ道はいくつかあり、堺には結界も張られてはいますが、弱い者は隙間を抜けて行き来します。
ほとんどは無害です。
あやかしがこちらにくれば術師に退治されるでしょうし、逆に人間が向こう側に行けば神隠しとでも呼ばれているでしょう。
一部の例外を除き、神はあちら側に感知していませんので、神隠しにあった人間が、向こうでどんな扱いを受けているかはわかっておりませんが……。
分けたことにより、昔より被害が少なくなったことは事実。
「結果だけ見れば、あなた方の犠牲のお陰で、多くの人間とあやかしが救われています」
締めくくるひとことに、鬼達がやりきれない顔をしている。
自分たちの仲間だけが犠牲になったのだ。
それで他が救われたなんて言われても、当人達は救われない。
なぜ、そこまでわかっていて、自分の時に助けてくれなかったのか。
対応が遅いと責められても仕方のないこと。
「無実のあなた方には、力及ばす、申し訳なかったと、アマテラス様と術師の方に代わりお詫びいたします」
イカネさんは頭を下げる。
しばらくの静寂ののち、鬼のリーダーらしきひとと目があった。
若い同胞を連れて逃げたという彼だ。
「………そこのお前」
「私かい?」
ツクヨミノミコトはイカネさんの隣に立ち、彼女の肩に触れる。
「お前なら、こいつらにしてくれたように、生き返らせることができたんじゃないのか?」
なぜ助けてくれなかったのか、と彼の目が訴える。