イケメンは好きだけど近づかないでください!
夏祭りから数日
もう夏休みも残り僅か
生憎私に友達は澪しかおらず
そうなると毎日することもなく
中学の時の私が知ったら驚くだろう
宿題が既に終わってしまったのだ
ベッドに寝っ転がりぼーっとする
澪に連絡すれば
今日は予定があると断られてしまった
仕方ないたまには一人でお出かけでもするかと
デートをするわけでもないのに
おしゃれをして化粧もしっかりして出かける
あれから一人で考えてみたり
澪に相談してみたりわかったこと
私は、秋月先輩が好き。
まぁ自覚したところでどうこうしたいとかはない
何よりも本人に良い距離間を保てと言われたわけで
今の私は発展できなくともいいポジションにいるし
でも、夏祭りのことを思い出す
「え、まって、俺ってお前のこと好きなのかな?」
『それこそ勘違いですよ』
「優ちゃんは俺の事好きなの?」
『え!?いや、かっこいいなーとは思うし
そりゃドキドキはしますけど…』
「俺もわかんねー。けど…」
けど…のあとがわからないけれど
先輩の顔が赤くなっていた、気がしたのを思い出して
恋を自覚した途端ポジティブに考えてしまう
いま悩んでも仕方ない!
学校が始まれば、もしかしたら
私の好きは勘違いの物だったって思うかもしれないし
頭をブンブンッと振り考えるのをやめる
考え事をしている間に駅についた
今日はウィンドウショッピングでもしようかな
プラプラと色んなお店に入り
すぐ必要なものでもないのに
可愛い文房具があると買ってしまう
『…無駄遣いしすぎた』
疲れたし休憩でもしようとしていれば
なにやらキャッキャッと騒いでいる女の子達がいた
「お兄さん、良かったらお茶でもしない?」
「…俺これから用事あるから無理かなー」
「えー!一杯だけ、ね?」
思わず会話が聞こえ近くを通るときに
どんなイケメンなんだろうと見てみれば
目が合ってしまった
「『あ』」
…よく知っているイケメンだった
思わずすぐに目を逸らしてしまった
そのまま足早に去ろうとすれば
スマホが着信を知らせる
画面を見れば”秋月先輩”の文字
『はい、なんでしょうか』
「なーに無視してんだよ」
『…あ、やっぱり先輩でしたかー!
似てるなーって思ったんですよ』
「嘘つけ。あ。て言ってたろ」
振り返ればまわりにいる子達を無視しながら
こちらを見てくる先輩
『流石顔面国宝ですね。どこでもモテモテ』
「言い方に棘があんなー。
あっ、もしかしてやきもち!?」
『はぁ!?そんなわけないです!さようなら!!!』
ちょっとムッとしたので
思わず電話を切ってしまった
気づいた時には既に遅かった
画面から目線を上げれば
怒っているオーラが漂っていた
回れ右して帰ろうとすれば
後ろからガシッと首に回る逞しい腕
『ヒェッ…痴漢!』
「誰が痴漢だ!寧ろ俺に痴漢されるなら本望だろ?」
『……………それは違いますよ!!!』
「いまちょっと考えたろ」
ギャーギャーと騒いでいれば
人が多い通りだったから注目の的だった
「行くぞ」
『あ、ちょっと』
引っ張られるが今日はこの前と違う事に気づく
『…勘違いするって言ったのに』
「あ?何か言ったか?」
『…何も言ってないです』
強引に引っ張っていくのは夏祭りの時と同じ
違うのは私の手を取ったこと
『ハァー…』
「ため息つくと幸せ逃げんぞー」
『誰のせいだとっ!?』
「?」
『なんでもないでーす』