イケメンは好きだけど近づかないでください!
流石にまだ乾いておらず
とりあえずミニゴムでちょんまげにする
いつかの先輩を思い出した
本当ならば澪が貸してくれたアイロンで
直すつもりだったが生憎次の授業が移動だった
「お、デコだし」
移動しようとすれば何故か1年の階に先輩がいた
「こんにちは、何かありました?」
「こんにちは澪ちゃん!それがねー澪ちゃん、
最近どっかの誰かさんが
すーぐ逃走するから教室まで来てあげたの」
俺やさしくねー?と澪に同意を求める
そんなの澪に聞いたら全力で肯定されるに決まってる
「先輩優しいです!」
ほら見ろ。キラキラした目で拝むな
柊先輩はどうした!柊先輩は!
『先輩ごめんなさい!学校では話かけないでください!』
では!と澪の手を引っ張り
小走りで先輩を置き去りにして去る
「…先輩に相談しなくて良かったの?」
『何を?』
「水被ったこと」
『なんて言うんだよ。
女の先輩に水掛けられちゃったぁ助けてぇって?』
水掛けられたくらいで泣きついてもしょうがない
それに先輩はいま大事な時期なんだから
余計な話して時間奪いたくない
「あんたって子はー…本当にいい女だよー」
変な男に騙されるなよーと珍しく
私の頭をなでてくる澪
澪も素直じゃないだけで私を心配してくれている
水をかけられた以外、特に何かされることもなく
平和に放課後になった
ガラッ
「優ちゃーん」
『ハァーーーー…』
「私に助けを求めるなー」
教科書などをしまい鞄を肩にかけ
帰ろうとする澪を鞄のヒモを引っ張って止める
『友達が困ってるんだぞ』
「そんな困ってないでしょ。いいことじゃん」
あの王子様がこんなにも教室まで迎え来てくれんだよ?
いや、そうなんだけどさ…
じゃ!と言いながら去って行く澪
「なぁなぁ、ちょっと俺とお話しよっか」
ズカズカと我が物顔で教室に入ってくる先輩
あのね、みんな困ってんのよ
そして私も困ってんの
これ以上目立つことはしたくない
『いや、あの』
「どっか寄って帰ろうぜ」
ポチポチとスマホをいじっている
この人、私の話を聞いているのだろうか
『学校ではできれば話しかけないで頂けると
助かると言いますか…』
「ファミレスか公園どっちがいい?」
『いや究極な二択ー…じゃなくて』
「なんだよ」
何か用でもあんのか?と肩に腕を回してくる先輩
『用とかじゃなくて…その、
とりあえず腕をどかしてもらって…』
「んー?やだー」
クッ…
距離間はどこに行ったんだよ馬鹿野郎ー!!!!!
『このイケメンの顔面国宝先輩がよー!!!』
私の叫びにクラスメイトは戸惑っただろう
そしてポカンとした顔の先輩
ダッと駆け出し廊下を歩いてる人たちをすり抜けて
別校舎の最上階奥まで逃げる