イケメンは好きだけど近づかないでください!



「おお、また雨ですかい?」

『まったくこうも毎日毎日水をかけて
よく飽きないよね』



鞄からタオルを出して顔と頭を拭く

最近の持ち物にタオルが必需品に追加された



あれからというもの暴力はないけれど

クラスの人から完全なる無視を食らったり

先輩たちから水をぶっかけられたり日常茶飯事だ



私のこのいじめが始まってから

澪は仲良くしていた子と疎遠になった

変わらず接してくれる澪には感謝しなくちゃ



トイレに行ってジャージに着替えたいが

きっと今度は別の子たちに水をかけられるだろう

仕方ないのでベランダに出てしゃがみ

クラウンドにも人がいないのを確認して着替える



急いで着替えて立ち上がり窓から教室へ入ろうとすれば

私の後ろの席、水瀬くんと目が合う

私と水瀬くんの席は窓側の列

はしたない瞬間を見られてしまった



「なんでジャージ?」

『通り雨をピンポイントで食らったの』

「そんな怪奇現象あんだw」



正直、そんなに話したことはない

席が前後だから授業の時にプリントを渡すくらいの間柄

即ちただのクラスメイト

それになんだかちょっとだけ話しかけづらいオーラ



『…』



って思ってたけど

普通に笑うんだなーとジッと見てしまった



「な、なんだよ」

『あ、ごめん、人間って話してみないと
わかんないよなーって考えてただけだから』

「なんだそれ」



会話はそれで途切れ私は席に座る


授業が始まりプリントが配られる

最近思うことがある

なぜこの学校はいまだにプリントがたくさん出るんだ

そろそろタブレット普及しようよ、と


渡ってきたプリントは2枚

私の後ろはもう水瀬くんだけだ

1枚回そうとすれば印刷ミスされていたので

私のやつを先に渡す



『はい』

「ん」



席を立ちあがり先生にプリントを交換してもらう



「印刷ミス?」

『そ』

「別に俺が交換したのに」

『え?気づいた人がやった方がいいじゃん
わかってて渡すほど気が利かないやつじゃないよー』

「さんきゅ」

『いいえー』


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