イケメンは好きだけど近づかないでください!



放課後になり帰られる前に

ダッシュで向かう

教室の前で走ってきたのがバレない様に

深呼吸をし扉に手をかける

優ちゃんに話をしようと伝えるが

できれば話しかけないでくれると…と

さっきと同じことが聞こえた気がしたので

全部無視を決め込み話を進める

用でもあるのかと尋ねれば



『用とかじゃなくて…その、
とりあえず腕をどかしてもらって…』

「んー?やだー」



少し恥ずかしがっているのがまた可愛い

ニコニコとしていれば



『このイケメンの顔面国宝先輩がよー!!!』



叫び声をあげて腕を振りほどき

走り去っていく優ちゃん

呆気に取られてポカンとしてしまう

いや、つか、鞄置いてってるけど…



「ハハッ てか今の何だよっ…
俺の顔は国宝なのかよ!!」



ツボに入ってしまった

ひとしきり笑い終わったので



「探しますかー!」



すぐに追いつくだろうと思ったが

思いのほか足が速くて見失う

屋上にもいないし…

あとどこだと考えたら

別校舎しかないかな

あそこならほぼ人こないし

軽い足取りで向かえば

階段を上った先で見つけた

またしても逃げようとするので止める



『す、すみません、でも先輩が
話聞いてくれないんじゃないですか』

「悪かったって。つか俺も話あんだけど」



座ってくれたので

逃げられないように目の前にしゃがみ込む



「まず!なんで最近すぐ逃げたりすんだ?
俺が距離感がどーのって言ったからか?」

『それももちろんあるますけど…
先輩ってイケメンで好きな子いっぱいいるんですよ
だから…なんか、私が仲良くしてていいのかな、とか』



最後のほうは小声だった

そんなこと考えてたのか

確かに前にもこういうことはあった

俺と仲良くしてるやつは

他の女の目の敵にされる

…まさか、こいつなんかされたとかじゃないよな?

もしそうだとしたら

俺と関わりたくない、か

でも…

ごめん、ダメな先輩で



「距離感って言ったのは撤回する。
俺がおまえといたいから、いい?」



これは完全に俺のわがままだ

強制してるのと同じだ



「よし、じゃあこれからは
逃げたりしないで普通に話せよ?」

『努力します…』

「それから、…っ」



今なら言える気がしたのに

雰囲気もクソもないよな…

ってそれは言い訳だな

なんっで好きのたった二文字が言えないんだ俺!?



『?』

「いや、なんでもねーわ」



そもそも!?俺がこんなわかりやすい態度取ってるのに

なんでお前は気づかないんだよ!?

首を傾げてこっち見んな!!かわいい!!



『そうですか…あ、あの話しかけて頂けたら
話しますけど、できれば私に近寄らないでください!!』

「は」



あれ、思ったより俺嫌われてる?と思ったが

次の言葉で頬が緩んだ



『心臓に悪いのでできれば本当にやめてください』

「ふ~ん?」



少なくとも俺に興味は持ってるってことだよな?

今はとりあえずそれで充分

目の前の生き物がすごく愛しくて

少し揶揄ってやりたくなった

俺の悪い癖が出てしまった

優しく頬に触れる

頬を赤く染めてこちらをジッと見てくる

こっちまで恥ずかしくなってきて

そのまま照れ隠しで頬を抓る



「ぶっさw」

『ひどい!!ってかいたいんですけど…
わたしのかわいいましゅまろほっぺが』

「フハッ、自分で可愛いって言うのかよ!」

『誰も言ってくれないので自分で言うんです』

「はいはい、かわいいかわいい」

『馬鹿にしてますよね!?』



馬鹿にもしてるけど

かわいいって言ったのは本音なんだけどなー

早く気づけよ、この馬鹿

まぁ可愛いって知ってるのは俺だけでいいけど


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