【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~
18. ドラゴン温泉
ミラーナに浴槽を作ってもらうと、オディールはクレヨンの家まで戻ってきて三階に駆け上がった。
「ハーイ! みんな! 雨降らすから家に入って!」
窓用に開けた穴からそう叫んで、オディールは夕暮れ空に向かって両腕を高く掲げる。
「え? 雨?」「マジですか……」
浴槽に雨で注水するという、トンデモ発想にみんな渋い顔をして家へと駆けこんでいく。
「【龍神よ、天の恵みをかの地に降らせたまえ】」
祭詞が部屋に響き、キラキラと光の微粒子に囲まれるオディール。
直後、ぶわっと湧き上がってきた暗雲から雨がパラパラと降り始める。
サラサラと降る雨は一面の乾ききった大地に久しぶりの湿り気をもたらした。大地にしみ込んでいく雨が、新鮮な雨の香りを広げていく。しかし、浴槽に溜まるほどの水の量ではなかった。
「こんなんじゃ風呂にはならんぞ。ディナーにして酒でも飲むか? クハハハ」
笑いながらレヴィアはオディールの背中をパンパンとはたいた。
「ちょっと、邪魔! あっち行ってて!」
オディールはレヴィアをドンと押しやると、奥歯をギリッと食いしばり、腹の奥底に全ての魔力を集結させる。
くぉぉぉぉぉ!
碧眼が鮮やかに輝き、金髪が逆立っていく。
黄金色に煌めく微粒子がオディールを包み込み、まぶしく輝いた刹那、再度バッと両腕を空に掲げる。
「【龍神よ、猛り狂え! 滴の猛威をここに!】」
明らかにヤバそうな祭詞が部屋に響いた。
直後、ビュウと不穏な風が吹き荒れ、ドッシャーッと滝のような集中豪雨が襲ってくる。
「あわわ……。なんちゅうことを……」
レヴィアは渋い顔をして、窓から降り込んでくる雨から避けるように奥に逃げた。
荒れ狂う風が吹きすさび、雨が容赦なく降り込んでくる中、オディールはびしょ濡れになりながら歓喜の声を上げる。
「きゃははは! 猛り狂え! ヒャッハー!」
初めて使う全力の雨スキル。それは想像を超えた威力で砂漠をあっという間に水で覆いつくしていく。
ヴォルフラムは激しく打ちつけてくる雨音に頭を抱えて丸くなり、ミラーナは雨の降り込まない隅っこでレヴィアと顔を見合わせて肩をすくめた。
◇
雨が上がると、オディールはレヴィアを連れて浴槽に行った。幸い、家の周りは少し高台だったため水は引いていたが、周囲は水びたしであり、ゴツゴツとした荒れ地も今は見渡す限り水面が広がっている。
十畳くらいの大きさはあろうかという浴槽には、なみなみと水がたたえられており、オディールは大満足。
「ほら、風呂になっただろ?」
ドヤ顔でレヴィアに声をかけるオディール。
「はいはい、じゃが水風呂じゃぞ?」
「そこでレヴィちゃんの出番! 一億度で一気にやっちゃって!」
オディールはノリノリでレヴィアの肩を叩いた。
「マジか!? 我はボイラー代わりかい!」
「いいじゃん、ドラゴン温泉。レヴィちゃんも入りたいでしょ?」
レヴィアはドラゴンとしての尊厳にかかわるようなことは避けたかったが、確かに露天風呂は気持ちよさそうだ。その魅力には逆らい難い。
「今日だけじゃぞ!」
レヴィアは、ボン! と爆発してドラゴン化し、カパッと巨大な口を開いた。
果たしてドラゴンブレスをくらった風呂は、ボコボコと派手に沸騰し、かなり蒸発してしまうことにはなったが、無事に風呂らしくなる。
「さすがレヴィアちゃん! サンキュー!」
オディールは嬉しそうにドラゴンの後ろ足のごつい鱗をペチペチと叩いた。
◇
ただ、お湯が熱過ぎたため、とても入れない。一行は先にディナーを取ることにした。
ミラーナは壁から石の板を生やしてテーブルにし、床から円筒を生やして椅子にする。
オディールはマジックバッグから魔法のランプを取り出すと壁にかけ、パンやドライフルーツ、ハム、チーズを出し、食器を並べた。
「なんじゃ、これっぽっちかい?」
レヴィアはハムを横からつまみ食いしながら不満をこぼす。
オディールはムッとしながらレヴィアの手をパシッとはたいた。
「人間はこのくらいでお腹いっぱいなんですー!」
「ふん! しょうがないな……」
レヴィアは指先で宙をツーっと裂き、できた空間の切れ目に両手を突っ込んだ。
「こんくらい用意せんかい!」
レヴィアは嬉しそうに十キロはありそうな巨大な肉隗を取り出し、バン! とテーブルに叩きつけた。まるで屠殺したばかりのような新鮮な肉塊からは鮮血が流れ出し、ポタポタとテーブルからしたたる。
「へ?」「うわっ」「ひぃ!」
唖然とする三人。
「そしてこうじゃ!」
レヴィアは大きく息を吸って可愛いほっぺたをプクッとふくらませると、真紅の瞳をギラッと輝かせながらいきなり口から火を吹きだした。まるで火炎放射器のように、青紫に輝く超高温のプラズマジェットを直接肉塊に吹き当てる。肉塊はバチバチ! と激しい音を立てて脂を吹きだし、燃え上がる。
「おぉ……」
肉が焼けるあまりにも美味しそうな香りに誘われ、オディールは思わず唾を飲み込んだ。
「ハーイ! みんな! 雨降らすから家に入って!」
窓用に開けた穴からそう叫んで、オディールは夕暮れ空に向かって両腕を高く掲げる。
「え? 雨?」「マジですか……」
浴槽に雨で注水するという、トンデモ発想にみんな渋い顔をして家へと駆けこんでいく。
「【龍神よ、天の恵みをかの地に降らせたまえ】」
祭詞が部屋に響き、キラキラと光の微粒子に囲まれるオディール。
直後、ぶわっと湧き上がってきた暗雲から雨がパラパラと降り始める。
サラサラと降る雨は一面の乾ききった大地に久しぶりの湿り気をもたらした。大地にしみ込んでいく雨が、新鮮な雨の香りを広げていく。しかし、浴槽に溜まるほどの水の量ではなかった。
「こんなんじゃ風呂にはならんぞ。ディナーにして酒でも飲むか? クハハハ」
笑いながらレヴィアはオディールの背中をパンパンとはたいた。
「ちょっと、邪魔! あっち行ってて!」
オディールはレヴィアをドンと押しやると、奥歯をギリッと食いしばり、腹の奥底に全ての魔力を集結させる。
くぉぉぉぉぉ!
碧眼が鮮やかに輝き、金髪が逆立っていく。
黄金色に煌めく微粒子がオディールを包み込み、まぶしく輝いた刹那、再度バッと両腕を空に掲げる。
「【龍神よ、猛り狂え! 滴の猛威をここに!】」
明らかにヤバそうな祭詞が部屋に響いた。
直後、ビュウと不穏な風が吹き荒れ、ドッシャーッと滝のような集中豪雨が襲ってくる。
「あわわ……。なんちゅうことを……」
レヴィアは渋い顔をして、窓から降り込んでくる雨から避けるように奥に逃げた。
荒れ狂う風が吹きすさび、雨が容赦なく降り込んでくる中、オディールはびしょ濡れになりながら歓喜の声を上げる。
「きゃははは! 猛り狂え! ヒャッハー!」
初めて使う全力の雨スキル。それは想像を超えた威力で砂漠をあっという間に水で覆いつくしていく。
ヴォルフラムは激しく打ちつけてくる雨音に頭を抱えて丸くなり、ミラーナは雨の降り込まない隅っこでレヴィアと顔を見合わせて肩をすくめた。
◇
雨が上がると、オディールはレヴィアを連れて浴槽に行った。幸い、家の周りは少し高台だったため水は引いていたが、周囲は水びたしであり、ゴツゴツとした荒れ地も今は見渡す限り水面が広がっている。
十畳くらいの大きさはあろうかという浴槽には、なみなみと水がたたえられており、オディールは大満足。
「ほら、風呂になっただろ?」
ドヤ顔でレヴィアに声をかけるオディール。
「はいはい、じゃが水風呂じゃぞ?」
「そこでレヴィちゃんの出番! 一億度で一気にやっちゃって!」
オディールはノリノリでレヴィアの肩を叩いた。
「マジか!? 我はボイラー代わりかい!」
「いいじゃん、ドラゴン温泉。レヴィちゃんも入りたいでしょ?」
レヴィアはドラゴンとしての尊厳にかかわるようなことは避けたかったが、確かに露天風呂は気持ちよさそうだ。その魅力には逆らい難い。
「今日だけじゃぞ!」
レヴィアは、ボン! と爆発してドラゴン化し、カパッと巨大な口を開いた。
果たしてドラゴンブレスをくらった風呂は、ボコボコと派手に沸騰し、かなり蒸発してしまうことにはなったが、無事に風呂らしくなる。
「さすがレヴィアちゃん! サンキュー!」
オディールは嬉しそうにドラゴンの後ろ足のごつい鱗をペチペチと叩いた。
◇
ただ、お湯が熱過ぎたため、とても入れない。一行は先にディナーを取ることにした。
ミラーナは壁から石の板を生やしてテーブルにし、床から円筒を生やして椅子にする。
オディールはマジックバッグから魔法のランプを取り出すと壁にかけ、パンやドライフルーツ、ハム、チーズを出し、食器を並べた。
「なんじゃ、これっぽっちかい?」
レヴィアはハムを横からつまみ食いしながら不満をこぼす。
オディールはムッとしながらレヴィアの手をパシッとはたいた。
「人間はこのくらいでお腹いっぱいなんですー!」
「ふん! しょうがないな……」
レヴィアは指先で宙をツーっと裂き、できた空間の切れ目に両手を突っ込んだ。
「こんくらい用意せんかい!」
レヴィアは嬉しそうに十キロはありそうな巨大な肉隗を取り出し、バン! とテーブルに叩きつけた。まるで屠殺したばかりのような新鮮な肉塊からは鮮血が流れ出し、ポタポタとテーブルからしたたる。
「へ?」「うわっ」「ひぃ!」
唖然とする三人。
「そしてこうじゃ!」
レヴィアは大きく息を吸って可愛いほっぺたをプクッとふくらませると、真紅の瞳をギラッと輝かせながらいきなり口から火を吹きだした。まるで火炎放射器のように、青紫に輝く超高温のプラズマジェットを直接肉塊に吹き当てる。肉塊はバチバチ! と激しい音を立てて脂を吹きだし、燃え上がる。
「おぉ……」
肉が焼けるあまりにも美味しそうな香りに誘われ、オディールは思わず唾を飲み込んだ。