【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~
20. ガールズトーク
レヴィアは金髪からポタポタとエールをこぼしながら渋い顔でオディールを見る。
つい吹き出してしまうオディール。
「ちょっともう! どうなってんじゃこいつは!」
レヴィアは怒るが、ヴォルフラムはいつの間にか潰れてテーブルに突っ伏してしまっている。
見かねたミラーナがタオルを出してレヴィアを拭いてあげた。
「あー、もう! 散々じゃ!」
「まあまあ、ヴォルさんも悪気がある訳じゃないですし……」
なだめながら金髪を丁寧にふき取るミラーナ。
「じゃあ、今日はお開き。僕は風呂入ってくるよ」
オディールは軽く後片付けをしながら立ち上がった。そろそろいい湯加減に違いない。
「あら、私も行くわ」
ミラーナは目をキラキラさせながら嬉しそうにオディールを見る。
「えっ!?」
予想外の展開にオディールは息を呑み、目を見開いたままミラーナの方を見つめた。
「あら、いつもオディの入浴には私が手伝ってたわよ? 恥ずかしくなんてないでしょ?」
ミラーナは不思議そうにオディールを見る。どうやら自分が見られることを問題には感じていないようだった。
十七歳の女の子と一緒にお風呂に入る、それは果たして許されるのだろうか? オディールは困惑し、キュッと唇をかんだ。もちろん、見た目は十五歳の女の子だ、誰も不審には思わないのは分かっているが、サラリーマンの良心が痛む。
しかし、断るのもおかしな話である。何を理由に断るのだろうか?
「いいから行きましょ?」
ミラーナはそう言うとバッグをもって、オディールを引っ張っていった。
「えっ!? ちょ、ちょっと……」
オディールは言葉を思いつかず、ただ、引かれるままについていく。
外に出て、オディールは息を呑んだ。天の川が地平線から雄大に立ち上がり、無数の星々が輝きを放ち、まるで宝石箱をひっくり返したような華やかさで夜空を飾っていた。
「うはぁ……これは凄い……」
オディールは砂漠を覆う大自然のアートに感嘆する。王都ではこんなに綺麗な星空は見えないし、そもそも貴族の暮らしでは夜空を眺めるような余裕なんてなかった。これもまた勝ち得た自由の果実なのかもしれない。
◇
浴槽に手を入れると丁度いい温度になっていた。
幸い星明かりでは裸体など見えない。オディールは覚悟を決めて、岩の衝立があるだけの脱衣場で服を脱ぎ、浴槽に入る。
「うはぁ、いい湯だ……」
オディールはおおきくため息をつき、両手で顔を洗った。
「うわぁ、こんなに広いお風呂、贅沢ねぇ」
ミラーナも嬉しそうに入ってくる。メイドの身分では入浴なんてできなかったのだ。もしかしたら初めてのお風呂かもしれない。
「あ、あれが……白鳥座かな?」
オディールはドキドキする心臓を気づかれないように、天の川の方を指さした。
「え? そんな星座なんてあったかしら?」
ミラーナは指さす方向をよく見ようと腕の上に顔を持ってきて、ふくよかな柔らかさがオディールの背中に触れる。
うっ……。
オディールは金縛りにあったように固まってしまった。
「ど、どうしたの?」
「あ、当たってる……」
オディールが真っ赤になってつぶやく。
「何言ってるのよ、女同士で! はははは」
オディールの背中をパン! と叩くミラーナ。
「そ、そうだけど……、ね?」
「オディの肌はきめ細やかで柔らかい……。羨ましいわ……」
ミラーナは、オディールの腕をさすった。
「そ、そうかなぁ……」
「やっぱり貴族様って違うのねっていつも思っていたわ」
「今じゃ平民だけどね」
オディールは自嘲気味に肩をすくめた。
「……。こ、後悔……、してる?」
ミラーナは恐る恐る聞く。
「ぜーんぜん! こうやって露天風呂でさ、ミラーナと一緒に夜空眺めてる方が百万倍素敵な人生だもん」
そう言いながらオディールはお湯をバッと空に放った。
飛び散った水玉は、家の明かりを反射して、キラキラと星空を背景に流れ星のように煌めく。
「ふふっ、私も連れてきてもらって良かったわ」
「ほ、本当?」
「そうよ、実は出入りの商人の男にしつこく言い寄られていて困ってたのよ」
「えっ!?」
オディールは、初めて聞いたミラーナの男関係の話に心臓がキュッとなる。
「中年の脂ぎった男なんだけどね、金はあるから食事だけでもってしつこいのよ……」
「そ、それでなんて答えたの?」
「もちろん、断ってたわよ」
オディールはホッと胸をなでおろす。
「でもね、孤児院出身のメイドなんて将来ないのは確かなのよ。だから誰かと結婚しないとならないの」
「ダメ、ダメーー!」
オディールは思わずミラーナの腕にしがみついた。
「ははは、今はもう結婚どころじゃなくなったから大丈夫よ」
ミラーナは屈託のない笑い声をあげる。
オディールは口をとがらせてじっと考える。思い付きでこんなところまでミラーナを引っ張りまわしてしまったが、結婚相手含めミラーナの人生もちゃんと考えなければならないのは事実だった。
「あ、あのさ……」
オディールが口を開いた時だった。
ドタドタドタっと足音が聞こえてくる。
「おう! ガールズトークじゃな、我も混ぜろ!」
と、声がして、レヴィアが風呂に飛び込んでくる。
バッシャーン! とものすごい水しぶきがあがり、二人に直撃した。
つい吹き出してしまうオディール。
「ちょっともう! どうなってんじゃこいつは!」
レヴィアは怒るが、ヴォルフラムはいつの間にか潰れてテーブルに突っ伏してしまっている。
見かねたミラーナがタオルを出してレヴィアを拭いてあげた。
「あー、もう! 散々じゃ!」
「まあまあ、ヴォルさんも悪気がある訳じゃないですし……」
なだめながら金髪を丁寧にふき取るミラーナ。
「じゃあ、今日はお開き。僕は風呂入ってくるよ」
オディールは軽く後片付けをしながら立ち上がった。そろそろいい湯加減に違いない。
「あら、私も行くわ」
ミラーナは目をキラキラさせながら嬉しそうにオディールを見る。
「えっ!?」
予想外の展開にオディールは息を呑み、目を見開いたままミラーナの方を見つめた。
「あら、いつもオディの入浴には私が手伝ってたわよ? 恥ずかしくなんてないでしょ?」
ミラーナは不思議そうにオディールを見る。どうやら自分が見られることを問題には感じていないようだった。
十七歳の女の子と一緒にお風呂に入る、それは果たして許されるのだろうか? オディールは困惑し、キュッと唇をかんだ。もちろん、見た目は十五歳の女の子だ、誰も不審には思わないのは分かっているが、サラリーマンの良心が痛む。
しかし、断るのもおかしな話である。何を理由に断るのだろうか?
「いいから行きましょ?」
ミラーナはそう言うとバッグをもって、オディールを引っ張っていった。
「えっ!? ちょ、ちょっと……」
オディールは言葉を思いつかず、ただ、引かれるままについていく。
外に出て、オディールは息を呑んだ。天の川が地平線から雄大に立ち上がり、無数の星々が輝きを放ち、まるで宝石箱をひっくり返したような華やかさで夜空を飾っていた。
「うはぁ……これは凄い……」
オディールは砂漠を覆う大自然のアートに感嘆する。王都ではこんなに綺麗な星空は見えないし、そもそも貴族の暮らしでは夜空を眺めるような余裕なんてなかった。これもまた勝ち得た自由の果実なのかもしれない。
◇
浴槽に手を入れると丁度いい温度になっていた。
幸い星明かりでは裸体など見えない。オディールは覚悟を決めて、岩の衝立があるだけの脱衣場で服を脱ぎ、浴槽に入る。
「うはぁ、いい湯だ……」
オディールはおおきくため息をつき、両手で顔を洗った。
「うわぁ、こんなに広いお風呂、贅沢ねぇ」
ミラーナも嬉しそうに入ってくる。メイドの身分では入浴なんてできなかったのだ。もしかしたら初めてのお風呂かもしれない。
「あ、あれが……白鳥座かな?」
オディールはドキドキする心臓を気づかれないように、天の川の方を指さした。
「え? そんな星座なんてあったかしら?」
ミラーナは指さす方向をよく見ようと腕の上に顔を持ってきて、ふくよかな柔らかさがオディールの背中に触れる。
うっ……。
オディールは金縛りにあったように固まってしまった。
「ど、どうしたの?」
「あ、当たってる……」
オディールが真っ赤になってつぶやく。
「何言ってるのよ、女同士で! はははは」
オディールの背中をパン! と叩くミラーナ。
「そ、そうだけど……、ね?」
「オディの肌はきめ細やかで柔らかい……。羨ましいわ……」
ミラーナは、オディールの腕をさすった。
「そ、そうかなぁ……」
「やっぱり貴族様って違うのねっていつも思っていたわ」
「今じゃ平民だけどね」
オディールは自嘲気味に肩をすくめた。
「……。こ、後悔……、してる?」
ミラーナは恐る恐る聞く。
「ぜーんぜん! こうやって露天風呂でさ、ミラーナと一緒に夜空眺めてる方が百万倍素敵な人生だもん」
そう言いながらオディールはお湯をバッと空に放った。
飛び散った水玉は、家の明かりを反射して、キラキラと星空を背景に流れ星のように煌めく。
「ふふっ、私も連れてきてもらって良かったわ」
「ほ、本当?」
「そうよ、実は出入りの商人の男にしつこく言い寄られていて困ってたのよ」
「えっ!?」
オディールは、初めて聞いたミラーナの男関係の話に心臓がキュッとなる。
「中年の脂ぎった男なんだけどね、金はあるから食事だけでもってしつこいのよ……」
「そ、それでなんて答えたの?」
「もちろん、断ってたわよ」
オディールはホッと胸をなでおろす。
「でもね、孤児院出身のメイドなんて将来ないのは確かなのよ。だから誰かと結婚しないとならないの」
「ダメ、ダメーー!」
オディールは思わずミラーナの腕にしがみついた。
「ははは、今はもう結婚どころじゃなくなったから大丈夫よ」
ミラーナは屈託のない笑い声をあげる。
オディールは口をとがらせてじっと考える。思い付きでこんなところまでミラーナを引っ張りまわしてしまったが、結婚相手含めミラーナの人生もちゃんと考えなければならないのは事実だった。
「あ、あのさ……」
オディールが口を開いた時だった。
ドタドタドタっと足音が聞こえてくる。
「おう! ガールズトークじゃな、我も混ぜろ!」
と、声がして、レヴィアが風呂に飛び込んでくる。
バッシャーン! とものすごい水しぶきがあがり、二人に直撃した。