【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~
46. 長さゆえの過ち
ローレンスが来てからというもの、セント・フローレスティーナは加速度的に発展していった。
川は運河として整備され、南の街ハーグルンドとの航路が開通する。これにより人と物資の往来が飛躍的に拡大することになった。セント・フローレスティーナからは聖水、果物が輸出され、ハーグルンドからは日用品や建築資材、家具などが輸入されることとなる。特に聖水は世界一の純度と濃度を誇り、非常に高値で売れ、外貨の獲得に大きく寄与した。
増え続ける移住者に対応するため、セントラルの西側には扇状に通路を造り、豪華客船をモチーフとした水上マンションを林立させていく。
さらに観光事業も開始し、富裕層向けのラグジュアリーなツアーの販売を始めた。病気が治り、アンチエイジングにも効果的だということが知れ渡ると、貴族や裕福な商人はこぞってやってくるようになる。そしてその美しい景観、未来的な設備、聖水風呂の圧倒的な効果に感動し、リピーターとして予約待ちが連なるまでになっていた。
そんな順風満帆な発展に、オディールは満を持してミラーナに切り出す。
「そろそろ、モビル・アーツ……、作ろうよ」
オディールはモジモジしながらミラーナを上目づかいに見た。
「え? あの、人型何とか兵器?」
「人型機動兵器だよ! ローレンスが来た時も今のゴーレムじゃ対抗できなかったしさ、そろそろ防衛も考えないと」
オディールはここぞとばかりに設計図を広げてアピールする。
「ああ、そうね……。でも、ちょっと厳つすぎ? セント・フローレスティーナっぽくデザインは変更させてもらうわよ?」
「えっ!? デ、デザイン変更って……?」
「セント・フローレスティーナは花の都よ? 花に似合うデザインじゃないと……」
ミラーナはそう言いながら楽しそうにモビル・アーツの肩当と盾に花の絵を描き加えていく。
「は、花……?」
オディールは泣きそうな顔をしながらミラーナの筆先を眺める。
「ほぅら、こっちの方がいいわ!」
ミラーナは満足げにニッコリと笑った。
「あ、そ、そうだねぇ……」
オディールは作り笑いを浮かべ、力なくうなずいた。
◇
全長十八メートルになる巨大ゴーレムはブーツだけでも四メートル近い。二人は広い空き地を作り、そこで作業を始めた。
ミラーナは土魔法で基本的な形をにょきにょきと生やし、そこに設計図に合わせて関節の部品や外装パーツを付けていく。
作ったパーツは完成した時の位置に合わせて地面に並べていった。ミラーナの手際の良さもあり、夕方には全部のパーツが完成して並び終える。
おぉぉぉ……。
異世界で初めて見たメカメカしい光景に、オディールは感動でプルプルと震えていた。巨大ブーツにいかつい肩当、そして鋭いスパイク付きの美しい兜……。子供の頃、飽きることなく愛でていたプラモデルのあいつが今、等身大サイズで大地に配置されている。それはオディールにとってまさに夢の実現だった。
「イエス、イエス!」
オディールは目を見開き、興奮して腕をブンブンと振った。
「こんなのでいいかしら? 後はこれを組んで行けばいい?」
ミラーナは少し疲れた顔でオディールを見る。
「ちょっと待って、最終チェーック!」
オディールはメジャーを持って各パーツのサイズを測っていく。その目はいつになく真剣だった。
「オディはなんでこんなのが好きなのかしら……?」
ミラーナはそんな生き生きとしたオディールを見ながら、首をかしげる。
「あっ! ここ五ミリ長いよ!」
オディールはブーツのサイズを測りながらミラーナを見た。
「えー……。こんな何メートルもある物、五ミリなんて誤差だわよ!」
「ふっ、認めたくないものだな。長さゆえの過ちというものを……」
オディールは変なポーズを取りながらカッコつけて言う。
「……。オディ、大丈夫? さっきから変よ?」
「勝利の栄光を君に! なーんちゃって、きゃははは!」
オディールは意味不明なことを口走りながら浮かれていた。
◇
翌朝、オディールはヴォルフラムやトニオも連れてくる。
たくさん並ぶパーツは朝露に濡れ、日の光を浴びて輝いていた。
「おぉぉぉぉ……。美しい……」
夢にまで見たモビル・アーツが今まさに誕生を待っていることに、オディールの心は舞い上がり、高揚感に包まれる。
「オディールさん、一体これは何なんすか?」
トニオは訳わからないパーツがずらりと並んだ様子を見て、首をかしげる。
「人型機動兵器モビル・アーツだよ。美しいと思わないかね?」
オディールはドヤ顔でパシパシと巨大なブーツを叩いた。
「はぁ……、ゴテゴテしててよく分からないっす」
オディールはトニオをジト目で見るとポンポンと肩を叩き、ため息をつく。
「気に入ったぞ、小僧。それだけハッキリものを言うとはな。まあいい、組み立てを始めよう!」
何かになり切ってノリノリのオディールを見ながら、トニオとヴォルフラムは顔を見合わせ、首をかしげる。
二人の作業は何トンもあるパーツを持ち上げて隣のパーツと組み合わせること。二人はやぐらを組み立てて滑車を降ろし、まずは膝関節を組付けていく。
「オーライ、オーライ! うーん、あと二センチ!」
オディールは横から位置決めをして、力を合わせ、超重量のパーツ同士を組み合わせていく。
「オーライ、オーライ、ハーイ、OK! ミラーナ、固定して!」
「はいはい……」
ミラーナは呪文を唱え、関節のカバーを生やし、覆っていく。
そんな作業を繰り返し、昼過ぎにはすべての組付けが終わった。
可憐な花々が咲き誇る大地に横たわる等身大モビル・アーツ。それは近未来から訪れたかのような異次元の存在感を放っていた。
やぐらに登ったオディールは横たわるモビル・アーツを眺め、その重厚感のある機械的な美にうっとりとしながら震えていた。
川は運河として整備され、南の街ハーグルンドとの航路が開通する。これにより人と物資の往来が飛躍的に拡大することになった。セント・フローレスティーナからは聖水、果物が輸出され、ハーグルンドからは日用品や建築資材、家具などが輸入されることとなる。特に聖水は世界一の純度と濃度を誇り、非常に高値で売れ、外貨の獲得に大きく寄与した。
増え続ける移住者に対応するため、セントラルの西側には扇状に通路を造り、豪華客船をモチーフとした水上マンションを林立させていく。
さらに観光事業も開始し、富裕層向けのラグジュアリーなツアーの販売を始めた。病気が治り、アンチエイジングにも効果的だということが知れ渡ると、貴族や裕福な商人はこぞってやってくるようになる。そしてその美しい景観、未来的な設備、聖水風呂の圧倒的な効果に感動し、リピーターとして予約待ちが連なるまでになっていた。
そんな順風満帆な発展に、オディールは満を持してミラーナに切り出す。
「そろそろ、モビル・アーツ……、作ろうよ」
オディールはモジモジしながらミラーナを上目づかいに見た。
「え? あの、人型何とか兵器?」
「人型機動兵器だよ! ローレンスが来た時も今のゴーレムじゃ対抗できなかったしさ、そろそろ防衛も考えないと」
オディールはここぞとばかりに設計図を広げてアピールする。
「ああ、そうね……。でも、ちょっと厳つすぎ? セント・フローレスティーナっぽくデザインは変更させてもらうわよ?」
「えっ!? デ、デザイン変更って……?」
「セント・フローレスティーナは花の都よ? 花に似合うデザインじゃないと……」
ミラーナはそう言いながら楽しそうにモビル・アーツの肩当と盾に花の絵を描き加えていく。
「は、花……?」
オディールは泣きそうな顔をしながらミラーナの筆先を眺める。
「ほぅら、こっちの方がいいわ!」
ミラーナは満足げにニッコリと笑った。
「あ、そ、そうだねぇ……」
オディールは作り笑いを浮かべ、力なくうなずいた。
◇
全長十八メートルになる巨大ゴーレムはブーツだけでも四メートル近い。二人は広い空き地を作り、そこで作業を始めた。
ミラーナは土魔法で基本的な形をにょきにょきと生やし、そこに設計図に合わせて関節の部品や外装パーツを付けていく。
作ったパーツは完成した時の位置に合わせて地面に並べていった。ミラーナの手際の良さもあり、夕方には全部のパーツが完成して並び終える。
おぉぉぉ……。
異世界で初めて見たメカメカしい光景に、オディールは感動でプルプルと震えていた。巨大ブーツにいかつい肩当、そして鋭いスパイク付きの美しい兜……。子供の頃、飽きることなく愛でていたプラモデルのあいつが今、等身大サイズで大地に配置されている。それはオディールにとってまさに夢の実現だった。
「イエス、イエス!」
オディールは目を見開き、興奮して腕をブンブンと振った。
「こんなのでいいかしら? 後はこれを組んで行けばいい?」
ミラーナは少し疲れた顔でオディールを見る。
「ちょっと待って、最終チェーック!」
オディールはメジャーを持って各パーツのサイズを測っていく。その目はいつになく真剣だった。
「オディはなんでこんなのが好きなのかしら……?」
ミラーナはそんな生き生きとしたオディールを見ながら、首をかしげる。
「あっ! ここ五ミリ長いよ!」
オディールはブーツのサイズを測りながらミラーナを見た。
「えー……。こんな何メートルもある物、五ミリなんて誤差だわよ!」
「ふっ、認めたくないものだな。長さゆえの過ちというものを……」
オディールは変なポーズを取りながらカッコつけて言う。
「……。オディ、大丈夫? さっきから変よ?」
「勝利の栄光を君に! なーんちゃって、きゃははは!」
オディールは意味不明なことを口走りながら浮かれていた。
◇
翌朝、オディールはヴォルフラムやトニオも連れてくる。
たくさん並ぶパーツは朝露に濡れ、日の光を浴びて輝いていた。
「おぉぉぉぉ……。美しい……」
夢にまで見たモビル・アーツが今まさに誕生を待っていることに、オディールの心は舞い上がり、高揚感に包まれる。
「オディールさん、一体これは何なんすか?」
トニオは訳わからないパーツがずらりと並んだ様子を見て、首をかしげる。
「人型機動兵器モビル・アーツだよ。美しいと思わないかね?」
オディールはドヤ顔でパシパシと巨大なブーツを叩いた。
「はぁ……、ゴテゴテしててよく分からないっす」
オディールはトニオをジト目で見るとポンポンと肩を叩き、ため息をつく。
「気に入ったぞ、小僧。それだけハッキリものを言うとはな。まあいい、組み立てを始めよう!」
何かになり切ってノリノリのオディールを見ながら、トニオとヴォルフラムは顔を見合わせ、首をかしげる。
二人の作業は何トンもあるパーツを持ち上げて隣のパーツと組み合わせること。二人はやぐらを組み立てて滑車を降ろし、まずは膝関節を組付けていく。
「オーライ、オーライ! うーん、あと二センチ!」
オディールは横から位置決めをして、力を合わせ、超重量のパーツ同士を組み合わせていく。
「オーライ、オーライ、ハーイ、OK! ミラーナ、固定して!」
「はいはい……」
ミラーナは呪文を唱え、関節のカバーを生やし、覆っていく。
そんな作業を繰り返し、昼過ぎにはすべての組付けが終わった。
可憐な花々が咲き誇る大地に横たわる等身大モビル・アーツ。それは近未来から訪れたかのような異次元の存在感を放っていた。
やぐらに登ったオディールは横たわるモビル・アーツを眺め、その重厚感のある機械的な美にうっとりとしながら震えていた。