人肉病
それと同時に圭太がジワリと移動して足先でバッドを自分の方へ引き寄せた。
袖がめくりあげられるのと、圭太がバッドを振り下ろすのが同時だった。

ガンッと鈍い音がして男子生徒が肩を押さえてうずくまる。
その空きに私は圭太の後ろへと逃げてきていた。
左肩の骨を砕かれた男子生徒がくもんの表情で私達を睨みつける。


「その子、感染者じゃないか! どうして一緒に行動してるんだ!」


右手でどうにか包丁を突きつけながら叫ぶ。


「薫はまだ食欲をセーブできてる。人を食べたりはしない」


圭太の説明に男子生徒は目を見開いた。
そして大声で笑い出す。


「そんなの不可能だ! 僕が見てきた感染者は残らず人肉を食べてたんだ。きっとその子だってすぐにそうなる! 今殺しておかないと、一番最初に食べられるのはお前になるぞ!」


唾を吐きながら叫ぶ男子生徒の言葉が突き刺さる。
私の空腹感はすでに限界を超えている。
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