人肉病
同時に大きく息を吸い込む。
感染前には美味しそうだと感じていた食べ物の匂いを受け付けられなくなっている。
食べるだけじゃなく、匂いまでダメになるとは思っていなかった。


「このままじゃ、本当になにも食べられなくなる……」


絶望的な気分で水をがぶ飲みする。
幸い、水だけはまだ受け入れうことができていた。
けれど、水を飲めば飲むほどに空腹感は募っていくようだった。

なにか食べたい。
固形物を、少しでいいから……。
私はほとんど無意識のうちにスカートのポケットに手を入れていた。
そしてそこに入っている弾力のあるものを取り出す。

手のひらに転がっているのは感染した純一が隠れてくれた人肉だった。
それはほんの一口分でしかなかったけれど、見た瞬間に喉が鳴った。

そしてお腹が痛いほどに空腹感を訴えてきている。
肉片をそっと鼻先に近づけてみると美味しそうな香りが漂ってくる。
また、ゴクリと喉がなる。
< 130 / 245 >

この作品をシェア

pagetop