人肉病
今までの空腹感を満たすように肉を削いで食べていく。
手の肉をすべて食べ終えたら、今度は彼女の制服を脱がしてみた。

ほとんど日焼けしていない真っ白な肌。
胸に触れてみると柔らかく、そしてすべすべしている。
まるで上質なクッションに触れているみたいだ。
けれどそれにもかぶりついた。

柔らかな肉は脂身が大きく甘くて、ほんのりとフルーツの香りがする。


「果物が好きな子だったのかも」


肉を食べながらそんなことを思う。
目を閉じると彼女が生きていた日々のことが走馬灯にように流れていく。
友人と笑いあった日々。
ピアノをしている彼女。

勉強が難しくて悩んでいる彼女。
なにも知らない生徒のことなのに、なぜか手にとるように理解できる。
相手の肉を食べるということは、相手の人生をいただくということだからかもしれない。

それはきっと、普段は意識していなくても豚や鳥や牛を食べるときだって同じだ。
家畜たちの人生を、命を、私達は頂いてきた。
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