人肉病
☆☆☆

女子生徒の肉がほとんどなくなって骨と制服だけになったとき、私はようやく手を止めることができた。
これほどにまで空腹感が募っているのは自分でも驚きだ。
壁にかけてある鏡の前に立つと顔中に血を付けている自分が立っていた。

その形相はまるで鬼のようで、体が冷たく氷りつく。
私は人肉を人かけら食べたあの瞬間から、人間ではなくなってしまったのかもしれない。
ハンカチを取り出して顔についた血を丁寧に拭うと、校長室のドアを開いた。

廊下には、壁をせもられにして座っている圭太の姿があった。
その姿を見てホッと胸をなでおろす。
もしかしたら私が食事をしている間にいなくなっているかもしれないと考えていたのだ。

圭太は最後に私に食事をさせてくれたのだと、そう思っていた。


「圭太……」


思わず涙が滲んできてしまい、うつむく。


「どうした?」


圭太はすぐに駆け寄ってきて、今までと変わらず私の頭を撫でてくれた。


「どうして、逃げなかったの?」
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