人肉病
全身に寒気が走り、早く逃げないとと警告音が脳裏に鳴り響く。
だけど後方は昇降口で、廊下は彼によって塞がれていて逃げ道はどこにもない。
いっそ、昇降口へ向けて駆けたほうがいいかもしれない。

緊張からゴクリと唾を飲み込んで後方を確認する。
それを彼は見逃さなかった。


「もしかして外へ逃げようとしてる? 無駄だよ。その前に撃ち殺される」


彼は楽しげな声で言う。
私は歯噛みしたい気持ちを押し殺して彼を睨みつけた。


「そんなのわかってる」

「そっかぁ。じゃあおとなしくこっちにおいで」


男子生徒がおいでおいでと手招きをするけれど、行くわけがなかった。
後ろへ逃げることも前へ進むことも敵わない中、男子生徒がジリジリと距離を詰めてくる。
野球バッドを校長室に置いてきてしまったことが今更ながら悔やまれる。


「さぁ、僕が殺してあげようか。どこを刺してほしい? お腹かな? それとも太ももかな?」


弱いものを嬲るように声をかけて近づいてくる。
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