人肉病
☆☆☆

昇降口から顔をのぞかせてみると、その付近には誰の姿もないことがわかった。


「今なら行ける!」


けれど校門へは向かわず、逆方向へと走った。
裏門からの方が脱出できる可能性は高いと踏んだのだ。
ひさしぶりに外の地面を踏んだ足裏の感触に感動すら覚えるけれど、立ち止っている暇はない。
私達は息を殺して裏門へと駆けた。

しかし裏門が見えてきたとき圭太が足を止める。
正門の半分くらいしかない出入り口の前に1人の自衛隊員が立っているのが見えたのだ。
さすがに門の前はみはられているみたいだ。
ここから突破できないとなると、後は塀を乗り越えて外へ出るしかない。


「こっちだ」


圭太に手を引かれて向かった先は背の高い植木が植えられている一角だった。
植木の奥には3メートルほどの灰色の塀がそびえ立っている。

植木はその塀を追い越すくらいの高さに育っていた。
私達は一旦植木の下に身を隠して、圭太は真剣に木を観察し始めた。


「たぶん、この木を登っていけば塀を超えることができると思う」
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