人肉病
塀と木の隙間は50センチほど。
あちこちへ伸びた枝を使えば登れないこともない。
けれど、武器や食料を持ったままでは少し大変そうだ。


「俺が先にいく」


圭太はそう言ってバッドを私に手渡してきた。


「大丈夫?」

「きっと、大丈夫だ」


頷き、木に手を足をかける。
運動神経のいい圭太は何の迷いもなくどんどん木を登っていく。

圭太が動く度に不自然に枝が揺れてハラハラしたけれど、どうにか壁と同じ高さまで登ることができた。
そこで一度止まり、手を伸ばして壁を掴む。
後は勢いをつけて壁に飛び移るだけだった。


「大丈夫。できそうだ」


圭太が壁の上から合図する。
私は圭太にバッドを2本差し出し、圭太はその柄を掴んでくれた。


でも、この距離で重たい食料を手渡すことは難しい。
私はタッパーをシャツの中に入れて両手で木に触れた。
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