人肉病
圭太が咄嗟に手を伸ばすけれど、届かない。
タッパーのひとつが地面に叩きつけられて、中身が散乱する。
スッと背筋が寒くなるのを感じた。
今の音は自衛隊員に聞かれたかもしれない。


「早く来るんだ!」


ハッと視線を上げると圭太がこちらへ手を伸ばしている。
もう躊躇している時間はなかった。
私は圭太の手を掴み、一気に来から塀へとジャンプした。

私の体を圭太が抱きとめてくれるのと、自衛隊員の足音が聞こえてくるのはほぼ同時だった。
圭太は私の体を抱えると、自分の体と私の体の隙間にタッパーとバッドを挟み込むと、ジャンプして塀から降りた。

着地した瞬間軽く顔をしかめた圭太だったけれど、すぐにふたりで駆け出した。
とにかく遠くへ。
街から出られなくても学校内で監禁されているよりはマシだ。
食料だってきっとあるし、なによりも今の状況が理解しやすくなる。

そう信じて、私達はかけたのだった。
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