人肉病
遺書
男性の頭部を何度も殴るとグシャッと音がして顔ごと潰れてしまった。
助けてくれと懇願していた声を、私は最後の最後まで無視をした。
拘束されて動けなくなっている人を、この手で殺したんだ。

そのショックは大きかったのん、空腹感の方が勝っていた。
殺した男性の頭部が潰れていて中から美味しそうな脳みそが出てきている。
私はそっと手を伸ばして男性の頭に自分の手を突っ込んだ。
硬い骨はよけて柔らかな脳みそだけを掴んで引っ張り出す。

それはまだ温かくて男性がつい数秒前まで生きていたことを物語っている。
私は掴んだ脳みそを口に入れた。
トロリとした味噌が舌に絡みついてきて、甘みと苦味が交互に訪れる。

噛む必要のないゼリーを喉の奥に流し込んでいくような感覚で飲み込む。
あぁ……美味しい。
自分が恍惚となっていることに気がついていた。

後ろで圭太が顔をそむけていることも。
それでも食べることをやめられない。

次から次へと手を伸ばし、あっという間に男性の脳みそは空になってしまった。
あぁ。もう終わってしまった。
< 186 / 245 >

この作品をシェア

pagetop