人肉病
拘束されて詰問されても言えることはなにもない。
だんまりを決め込んでいるわけでもないし、圭太は本当になにもわからないとしか思えなかった。
直は圭太の反応を見て奥歯を噛み締め、眉間にシワを寄せた。

圭太からなにかを聞き出すことができれば、打開策が見つかると思っていたけれど、これではなんの意味もない行為だ。
チッと小さく舌打ちをして、何気なしに寝室のテレビの電源を入れる。
幸いにもまだライフラインは通常運転をしている。

画面がついた途端、またこの街のニュースが流れていて再び舌打ちしたい気分になった。
少しでも気分転換になるかもしれないと思ったけれど、結局現実を突きつけられることになってしまった。


「もうテレビではこの街のことしかしなくなったのか?」


どのチャンネルでも同じようなニュースばかりでうんざりする。
そういえば大きな地震が起きたときにもテレビ局では毎日、毎時間同じような報道をしていて、それが原因で気が滅入ったことがあったかもしれない。
気分転換を諦めてテレビを消そうとしたそのときだった。
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