人肉病

☆☆☆

30分ほど経過してスマホの充電が半分ほど溜まった時、圭太はようやく解放されていた。
手首と足首に赤いスジが残っていて痛々しい。


「大丈夫?」

「あぁ、なんとか」


体がきしむのか顔をしかめつつ、ベッドの上に座る。
自分の手首をさすっている圭太へ直がスマホを突きつけた。

圭太は一瞬直を睨みつけるようにして見上げたけれど、素直にそれを受け取った。
電源を入れると一気にメッセージ受信が始まる。
その数の多さに圭太は目を見開いた。


「両親からのメッセージばかりだ」


隣から画面を覗き込んでみると、どれも圭太の身を案じているものばかりだ。
おちついたら連絡してほしいと、何度も連絡が入れられていることがわかった。
圭太の両親がどれだけ心配しているのか、これを見ただけでもよく理解できた。


「父親に連絡を入れろ」


直がフォークの先を圭太へ突きつけるようにして命令する。


「そんなやり方しなくても圭太は味方をしてくれる」

「どうかな? 自分だけは安全地帯にいるヤツなんか信用できない」


直はすっかり普段の真面目さを捨てて、口調も荒くなってしまっている。
圭太はそんな直に促されるがままに父親へ電話を入れた。
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