人肉病
「もちろんだ」


父親は大きく首肯した。


「ウイルスを殺す薬は?」


私が横から口をはさむと、父親はあからさまに嫌そうな表情を浮かべた。
圭太をたぶらかした女の質問を受けたくはないのだろう。


「答えろ」


直に包丁を突きつけられて、渋々と言った様子で口を開く。


「もちろん、研究所に行けばある」


その言葉に私は大きく息を吸い込んでいた。
ウイルスを殺すための薬が存在している。
この悪夢から解放される!


「それならすぐに薬を取りに行こう」


直の提案に父親がバカにしたように鼻を鳴らす。


「そう簡単に薬が手に入ると思ってるのか?」

「どういう意味だよ?」
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