人肉病
終焉
両親の死体の横には父親のスマホが落ちていた。
メッセージ画面が表示されたままのそれを確認すると、私に当てたメッセージが途中まで書かれた状態だった。


《父親:今家に戻ってきてお母さんと合流できた。ふたりとも無事だ。今から学校へ迎えに行くから、待っていなさい》


後は送信するだけだったそのメッセージはついに送信されることなく、送り主は息絶えた。
私は父親のスマホを膝の上で握りしめて呆然とした状態で車に揺られていた。

あれからどうやって自分が車に戻ったのか、いつ車が走り始めたのかよくわかっていない。
ただ、気がついたから車は山の道を走っていた。
それは圭太が私達に説明してくれた舗装されていない細い道で、車1台通るのがギリギリだった。

やがて木々が開けて円形の建物が見えてきた。
車は建物の入口の前に停車し、直が安堵したように頬を緩ませる。

もうすぐで薬を摂取することができる。

そうすれば自分たちは普通の人間に戻ることができるんだ。
だけど、それがどうしたというんだろう?
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