人肉病
私は彼らの姿を見送った後、ダンボールに近づいた。
中を確認してみると、サンドイッチやおにぎりやお茶ががまだまだ残っている。
誰も取りに来ていないということだ。


「くそっ。乱暴なことしやがって」


やっと立ち上がった圭太が500ミリのお茶を一本取り出して一口飲んだ。
残念ながら、この物資の中には食料以外のものは入っていないみたいだ。


「さっきの人たちが言ってたこと、本当なのかな」

「感染者の数のことか? さぁ……どうかな」


箱の中の食料が減っていないのは別のところから食べ物を調達しているからか、それとも感染者が増えて食事を取れない者が増えたからか。
それがわからなければ数もわからない。


「今日のところはみんな持参した弁当とかもあるし、食堂にも食べ物はあるだろうし。そんなに気にすることはないと思うけど……」


圭太がまた難しそうに眉間にシワを寄せる。


「今必要なのは食料じゃなくて、武器かもしれないな」


最悪の自体を想定して、圭太はそう言ったのだった。
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