私の担当医。~2~
軽くお腹にいれて
産科にもどるとすぐに診察室に案内された
スクラブ姿の若い男の先生が座っていた。
「お待たせ」
「おう」
海斗にみんな敬語なのに
普通に話してる。
仲良いのかな。
それより服が医者だ...
目を合わせられない
「すず椅子、座って」
椅子に座された
海斗は立ったまま話し始めた
「赤ちゃんは何週かまでは把握できてない。
けど妊娠してるのは確かだ。
透析もまだ2時間くらいが限界でできてないんだけどこれからどうなる?」
医「んー。それって本人の前で現実突きつけていいの?」
「うん、そのために連れてきた。
それですずが無理と判断したら今回は諦める。」
医「さっき軽く、カルテに目を通して
腎臓や喘息の状態見たけどかなり本人の覚悟がいる。透析は毎日になるだろうし普通の妊婦さんより体重管理しないといけないだろうし。赤ちゃんも小さく生まれてくる可能性が高い。なんなら無事に育ってくれるかも今の段階ではわからない」
「...」
なんでそんな悲しいことばっかり言うの
口調も鋭くて
耳を塞いでしまった。
「もういいです。聞きたくない。」
「ダメだ。最後まで聞け」
「嫌だ。帰る」
椅子を立ったが海斗に手を掴まれて
もう一度座らされた。
医「食事管理もしっかりしないといけないし分娩時、色々と考えると帝王切開かな。それでも赤ちゃん産みたい?」
「...」
「すず。」
「...」
医「厳しい言い方になるけど覚悟が持てないなら諦めたほうがいい。今回は...ちょっと無理じゃないかな」
そんなんすぐに覚悟持てって無理な話でしょ。
あーもうどうしたらいいかわからない。
「今日は帰る。帰って考える」
医「わかった。今日、赤ちゃんみなくていいの?」
「...見たいけど...怖いからいいです」
医「そっか。なら強制はしないけど早めに心拍とか確認してたほうがいいな。」
「すず、俺は赤ちゃんみたい。
頼む。何週かも知りたい。頑張って」
海斗が私の手を握って言った
「...」
あまり海斗は私に頼み事をしない。
ダメなものはダメと言い聞かされる
でも今回は懇願された。
珍しい
いつもの担当医としての海斗じゃなく
なんとなくだけどパパとしての海斗の意見な気がした
「...痛い?」
医「痛くないしすぐ終わるよ。
力抜いて座ってるだけ」
「力入れると痛いからリラックス。
俺もいるから。」
私も赤ちゃんを見たくないわけではなかった。
海斗も見たいって言ってくれてるし...
「...わかった。」
知らない先生の診察をうける覚悟をした。
ドキドキが止まらない
落ち着け落ち着け
医「よしじゃあ下を全部脱いでそこの椅子座って」
「えっ」
「大丈夫」
言われた通りにした
海斗はずっと手を繋いでいてくれるけど
とっても緊張する...
「はぁ。」
「大丈夫だ。力抜いてればすぐ終わる」
椅子が上がって診察が始まった
医「みて。赤ちゃん。
ちゃんと心臓動いてる」
緊張して目をつぶってた私に
医者が声をかけた
目を開けるとエコーでピクピク動いてる赤ちゃんの心臓だった
「...本当だ」
ちょっと感動した。
本当に動いていた。
私のお腹に命があるんだ。
「赤ちゃん。」
「そうだ、俺らの赤ちゃん」
医「10週くらいだな」
「もうそんないってたか。」
医「うん、これからどうするかなるべく早く2人で決めてくれ。
はい終わり、椅子うごくよ」
あっという間に終わった。
赤ちゃん小さかったけどすでにかわいかった。
医「俺は2人の意見を尊重する。
産むなら全力でフォローするし
諦めるとしても仕方ないことだから
準備を進める
でも一つ言えるのはお前の奥さんはそこまで弱くない。少し信じてもいいかもな」
「ありがとう。凌。
ちょっと自信持てた」
医「またどうするか連絡くれ」
「おう。
あっ、すず、凌に聞くことあるんじゃないの?」
凌?
この先生の名前、凌っていうのか
聞くこと...
なんかあったっけ
「寿司」
あっ忘れてた。
「あの...妊娠したらお寿司って食べちゃダメなんですか?」
医「ははっ。そんなことか。もっと深刻なことかと思った。まぁあまりいっぱい食べるのはよくないけどたまに少しだけならいいよ。」
「いいんだ」
「なぁ。俺と意見ちがうだろう。
妊婦の身体の事に関しては凌の方が詳しい。」
医「まぁ産科の専門だからな。
俺は堂本 凌(どうもと りょう)。
海斗の幼馴染だ。よろしく」
「救急隊の大和いるだろ?あいつと凌と3人で小さい頃から遊んでたんだ。」
「...そうなんだ」
「じゃまた連絡するわ。
ありがとう、凌」
海斗は休みだったみたいで
そのまま透析室に直行した。
「透析終わって食べれそうなら寿司行こうか」
「え、本当に?」
「凌行っていいって言ってたろ?」
「うん!」
さしぶりの海斗とのお寿司屋さんで
ワクワクしながら透析に挑んだ。
いつも通り1時間くらいで
気持ち悪くなって薬入れてもらっても治らず。
クタクタでその日の透析は終えた。
「寿司いけるか?」
部屋に戻った私はそんな元気もなく
ベッドから動けなかった
「今日は無理」
「わかった。」